浅学菲才の嘆息

2020-01-01から1年間の記事一覧

沢山美果子さんの「性からよむ江戸時代-生活の現場から」を読んで

性にまつわる話しは敬遠されがちだが、江戸時代からの性の営みを通して現代の性を見つめ直すのも良い機会ではないか。江戸後期は、性の営みやいのちの問題を考えるときに、大きな画期をなす時代。家を守り子孫に引き継ぐために子どもと子どもを産む女いのち…

小川たまかさんの『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話しを。』を読んで

日本は、旧態依然として男尊女卑が強く、ジェンダー指数は世界の149カ国中121位と順位を下げ続けている。著者は、学生時代の自らの性被害体験を押し黙ってきた事などから、女性に対する性差別、性被害の多様な取材経験などを通じて、だまり続ける女性に「私…

藤野裕子さんの「民衆暴力-一揆・暴動・虐殺の日本近代」を読んで

本書は、明治新政府対する新政反対一揆、自由民権運動と連動する形で起きた秩父事件、日清・日露の両戦役を通じた増税や戦死、厭戦気分の元で警察権力に向けられた日比谷焼き討ち事件、関東大震災時の朝鮮人虐殺事件という4つの出来事を軸として、日本近代の…

赤木雅子+相澤冬樹さんの「私は真実が知りたい」を読んで

私も真実が知りたい。 『あきらめない』 国会議員、公務員の皆さん どこ向いて仕事していますか? 改ざんしてしまいましたが、夫・赤木俊夫はまっすぐ前を向いていました。 赤木雅子 本書は、夫を理不尽に失った赤木雅子さんが国を提訴、俊夫さんの手記の公…

佐藤洋一郎さんの「米の日本史 稲作伝来、軍事物資から和食文化まで」を読んで

日本人にとって特別な食・コメ。稲はどこから日本列島に伝来し、どのように日本に普及したのかなど、稲作の起源を解説します。各時代の中でどのように米が作られ、そして水路建設するほど水利に力を入れ、お酒や和菓子づくりなど米食文化が花開いた近世時代…

梨木香歩さんの「ほんとうのリーダーのみつけかた」を読んで

2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、同調圧力の強まりは、マスクの着用の強要、自粛警察やインターネットでの誹謗中傷などが社会問題となり、多くの国民が同じ規範の生活を強いられ、息苦しく感じる生活が続いています。本書では、コロナ禍の現…

平松伴子さんの『従軍看護師』を読んで

1936年~1945年まで続いたアジア・太平洋戦争(第二次世界大戦)では、多くの国民が戦地で従軍した。一方、傷病した兵士を治療・看護する医師、看護師もアジア全域の戦地に送られた。従軍した兵士が招集礼状で、従軍したのに対し、看護師は招集状で従軍した…

平良隆久さんの「まんがでわかる 日米地位協定」を読んで(3)感想

高校1年生の主人公は、父親の運転する自動車でドライブ中、米兵が運転する自動車と事故となり、不合理な事故処理の原因が「日米地位協定」にあることを経験する。その事故をきっかけに、夏休みの自由研究で「日米地位協定」に取り組む事にし、クラスメイトを…

平良隆久さんの「まんがでわかる 日米地位協定」を読んで(2)朝鮮特需の幻想

朝鮮特需で、本当に当時の日本人の生活が改善したのか? まんがでわかる 日米地位協定 高校生が日米地位協定を調べてみた! 日本を被うアメリカの力に迫れ 著者:平良隆久 「ゴルゴ13」原作スタッフ平良隆久吠える!! 作画:藤沢勇希 監修:前泊博盛 ●日本人…

平良隆久さんの「まんがでわかる 日米地位協定」を読んで(1)米軍の北朝鮮への先制攻撃はない

アメリカと北朝鮮の関係を軍事から知る まんがでわかる 日米地位協定 高校生が日米地位協定を調べてみた! 日本を被うアメリカの力に迫れ 著者:平良隆久 「ゴルゴ13」原作スタッフ平良隆久吠える!! 作画:藤沢勇希 監修:前泊博盛 米軍の北朝鮮への先制攻撃…

稲葉陽二さんの「企業不祥事はなぜ起きるのか」を読んで

企業不祥事はなぜ起きるのか ソーシャル・キャピタルから読み解く組織風土 安倍晋三首相が辞任し、菅氏が次期総理候補との情勢。しかし、早くも次期政権は院政、傀儡が見え隠れし、水面下では次期大臣のポストを巡る派閥争いと権力闘争が漏れ伝わる。 本書の…

保坂正康さんの「昭和史の急所 」を読んで(5)私が考える「昭和天皇の戦争責任」

「昭和天皇の戦争責任」ひとつの論考より 昭和前期の戦争を体験した世代の人たちの心底には、政治的、思想的な信条を別にして<あの先生の戦争責任は誰にあるのか。昭和天皇にも戦争責任があるのではないか>との疑問があるということである。 こうした質問…

保坂正康さんの「昭和史の急所 」を読んで(4)兆しをとらえ、歴史に学ぶ

兆しをとらえ、歴史に学ぶ 不必要に悲観する理由はないが、気味の悪い徴候もある。歴史を見ると、民主主義が疲弊すると、必ずファシズムが出てくる。立憲政治、国会がちゃんと機能しなければならない。 『選択』2018.4(3) 保坂正康さん https://ja.wikipedia…

保坂正康さんの「昭和史の急所 」を読んで(3)日本人だからこそ誤りを認める

内省・自省を深める 「日本人なのになんでお前は日本を批判するのかと」という人がいます。しかし、私は日本人だからこそ、誤りを誤りとして認めなければならないと思っています。そして、そこから教訓を引き出してこなければいけないと。そうしなければ、わ…

保坂正康さんの「昭和史の急所 」を読んで(2)突然始まる戦争などない

北朝鮮脅威論を主張するみなさんへ 「突然“敵”が日本に攻めてきたらどうしますか」という素朴な戸締まり論の質問を講演のあとに受けることが増えました(略) 意味がないし、人を愚弄(ぐろう)しています。平時から戦争への移行は、大使の召還や国交断絶な…

保坂正康さんの「昭和史の急所」を読んで(1)「自省史観」の立場から

「自虐史観」から「自省史観」で納得する私。 二十一世紀に入ってからであろうか。奇妙な体験が重なるようになった。大学生相手の講演や市民を対象にした文化講座で昭和史を論じることがあるのだが、質問の折などに「先生の考えは、自虐史観ですね」と乱暴に…

保坂正康さんの「昭和の怪物 7つの謎」を読んで(2)渡辺和子は死ぬまで誰を赦せなかったのか

尊敬する渡辺和子さん。「置かれた場所で咲きなさい」では、様々な人びとの人生を輝かせた名著より。 保阪正康:二・二六事件では、単純に青年将校が決起した事件ではなく、荒木元陸将や真崎大将ら、いわゆる皇道派の将軍が青年将校を煽った(あおった)結果…

保坂正康さんの「昭和の怪物 7つの謎」を読んで(1)東条英機は何に脅えていたのか

保阪正康さんから、読書を通じて、歴史を熟知する大切さを学ぶ。 保阪正康氏が、赤松貞夫さんとやりとりしたというメモ帖に残っている。 保坂正康:東条英機という人は、文学書を読んだことがありますか。 赤松貞雄:小説のことか? ないと思う。 われわれ軍…

告白 岐阜・黒川 満蒙開拓団73年の記録 を読んで

2017年8月、NHK ETV特集で放送された「告白~満蒙開拓団の女たち~」を整理し、証言なども追加し、出版されました。 第2次世界大戦前、日本政府が進めた満蒙開拓政策により、岐阜県加茂郡黒川村(現・白川町黒川)を中心に約650名が、旧満州(中国東北…

証言 治安維持法「検挙者10万人の記録」が明かす真実 を読んで

大正末期の1925年に制定された治安維持法。当初は「国体の変革」や「私有財産制度の否定」を目的とする結社、主に共産主義者を取締の対象としていたが、終戦の年に廃止されるまで運用対象は一般の市民にまで拡大され、普通に暮らす普通の人々が次々に検挙さ…

証言 貧困女子 助けて!と言えない39人の悲しい理由 を読んで

格差と貧困を実感し、身につまされた。 彼女たちは、どこで躓いたのか?どうして「貧困スパイラル」から抜け出せないのか? 1.非正規女子の絶望 2.シングルマザーの悲劇 3.介護女子の失意 4.高齢女性の自棄 5.ネカフェ女子の迷走 6.女子大生の諦…

買春する帝国-日本軍「慰安婦」問題の基底- を読んで

著者の吉見義明氏は、30以上の長きに渡り、近現代史と歴史学の視点で、多くの先行研究をまとめる形で、「慰安婦」制度はどのようにして生まれたのかを丹念に読み解き、日本軍「慰安婦」の基底に迫る。明治政府が違憲としたはずの人身取引・人身売買によって…

書籍「ペーパーレス時代の紙の価値をしる 読み書きメディアの認知科学」を読んで

柴田博仁・大村賢悟(著): ペーパーレス時代の紙の価値をしる 読み書きメディアの認知科学.産業能率大学出版部,2018年7月31日(初版1冊発行),2019年7月31日(2冊発行) honto.jp 「電子媒体」か「紙媒体」か、悩んでいるときに本書にであった。 読書家の友…

映画「1917 命をかけた伝令」を鑑賞して

新型コロナウイルスが騒がれはじめた2020年2月中旬、上映開始と同時に鑑賞した。 今思えば、ぎりぎりの選択だったのだと我ながら反省しきりである。浅才非学ではあるが、インフルエンザの感染期でもあったため、手洗い、手指消毒、マスク着用と感染予防策を…

書籍「きみの正義は 社労士のヒナコ」を読んで

前作の「社労士のヒナコ」に続き、待望の続編「きみの正義は 社労士のヒナコ 」が発売され、少し時間が経過してしまったが、やっと読み終えた。 前作から少し成長した「社労士のヒナコ」が、悩みながら、事務所スタッフ等との連携で労働問題を解決する。また…

書籍「セックス難民」を読んで

繰り返し多くの男性雑誌に飛び交う「〇〇歳まで〇〇」。 多くのメデイアのキャッチコピーにに踊らされている事はないか、大切なものは何か。 浅才非学な私も本書を読み込む中で、少しは理解できたであろうか? www.shogakukan.co.jp 宋美玄 (著):セックス…

書籍「戦争と性暴力の比較史へ向けて」を読んで

書籍「戦争と性暴力の比較史に向けて 女性のエイジェンシー(行為主体性)を否定せずに戦争と性暴力を問題化することはいかに可能か」を読了した。大作であり、長期間を要したが、実にすばらしかった。 近現代史の歴史研究者である、吉見義明氏、笠原九十九…

書籍「草(プル) 日本軍「慰安婦」のリビングヒストリー」を読んで

待望の書籍が日本語に翻訳、出版され、早速購読した。 2017年に韓国で出版され、作者本人によるフランス語版を出したところ、すぐに英語版も出版され、複数の国々で翻訳出版されている。 korocolor.com キム・ジェンドリ・グムスク(著),都築寿美枝・李 昤…