浅学菲才の嘆息

2024-01-01から1年間の記事一覧

猿田佐世さん編著の「米中の狭間を生き抜く 対米従属に縛られないフィリピンの安全保障とは」を読んで

編著の猿田佐世氏は、弁護士として外交問題を研究する新外交イニシアティブ(ND)代表を務める。日本は、敗戦後の米軍占領統治と日米安全保障条約と日米地位協定により、米軍駐留を許し続け、駐留米兵が起こす事件も日米地位協定が警察や司法権を大きくゆ…

岡野八代さんの「ケアの倫理-フェミニズムの政治思想」を読んで

フェミニズムを深く研究し、広め、そして社会運動に参加する著者だからこそ、男性の理論で構築された社会のなかで、女性たちが自らの声で語り、自らの経験から編み出したフェミニズムの政治思想、ケアの倫理を重層的に論説する。ケアの倫理とは、女性たちの…

伊藤宣広さんの「ケインズ-危機の時代の実践家」を読んで

ケインズは経済学者として、「雇用・理事及び貨幣の一般論」を発表し、マクロ経済学の理論を展開した。本書では、ケインズの研究や業績の背景を1910年代の第1次世界大戦後の戦後処理、金本位制復権問題、1930年代の世界恐慌など、時論を展開する必要に迫られ…

「日本共産党第29回大会決定集」を読んで

党創立102年目を迎えた日本共産党は、20204年1月に第29回党大会を開催した。戦前の非合法下での弾圧、戦後のレッドパージを乗り越え、3度の躍進を経ての到達点と第30回党大会に向けての具体的方針提起が行われた。日本共産党綱領では、大企業などの「独占資…

平野卿子さんの「女ことばってなんなのかしら?『性別の美学』の日本語」を読んで

ドイツ語翻訳者の著者が、翻訳するときに悩む日本語の性差について、西洋語と比較して、それまで気づかなかった日本語の特性について興味深く綴ります。日本語の曖昧な表現は、時として女性語が用いられ、またコンフリクトを避ける表現としても活用される言…

NHKスペシャル取材班の「ビルマ 絶望の戦場」を読んで

「白骨街道」と言われおよそ3万の死者を出したインパール作戦。しかしその後の「撤退戦」で実に10万人を超える命が奪われたことはあまり知られていない。 前作の2017年に「戦慄の記録インパール」を取材し、NHKで放送、書籍化された続編と言える「ビルマ…

力武晴紀さんの「ザボンよ、たわわに実れ 民主医療に尽くした金高満すゑの半生」を読んで

戦前の民主医療・無産者診療所医療に尽力した金高満すゑ。1908年長崎県佐世保で生まれ育つも、小学校2年生で母を亡くし、2年後には父も逝去する。満すゑは佐治家の養女となり、新聞・書物などあらゆるものを読み尽くす読書家で、学力を発揮して佐世保高等女…