浅学菲才の嘆息

買春する帝国-日本軍「慰安婦」問題の基底- を読んで

 著者の吉見義明氏は、30以上の長きに渡り、近現代史歴史学の視点で、多くの先行研究をまとめる形で、「慰安婦」制度はどのようにして生まれたのかを丹念に読み解き、日本軍「慰安婦」の基底に迫る。明治政府が違憲としたはずの人身取引・人身売買によって支えられていた近代日本の公娼制が、帝国の形成、拡大とともに変容し、最終的には日本軍「慰安婦」制度を生み出すに至るまでの歴史をたどる。また、世界的な人権擁護の機運が高まる中で、日本独自の性買売の構造・システムが作り出されて行ったかを紐解く。

 コロナ禍においては、所得格差など更に顕著となる女性への性差別。その根底に、「慰安婦」制度の論考が脈客と流れていることを確認したい。そして、日頃目にする1万円冊の福澤諭吉。彼の名言は「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」と人間の平等を説いた。しかし、公娼制度は必要とした矛盾をおさえておきたい。

 

吉見義明:買春する帝国-日本軍「慰安婦」問題の基底,岩波書店,2019年6月26日

 

www.iwanami.co.jp

 

honto.jp