浅学菲才の嘆息

保坂正康さんの「昭和の怪物 7つの謎」を読んで(1)東条英機は何に脅えていたのか

保阪正康さんから、読書を通じて、歴史を熟知する大切さを学ぶ。

 

保阪正康氏が、赤松貞夫さんとやりとりしたというメモ帖に残っている

 

保坂正康:東条英機という人は、文学書を読んだことがありますか。

赤松貞雄:小説のことか? ないと思う。 われわれ軍人は小説を読むなんて軟派なことに関心を持ったら、軍人なんて務まらないよ。(「熊野(ゆや)」という著明な能のタイトルを挙げ)東条さんはそれを読めなかった。私は知っていただけにびっくりした。

 大日本帝国の軍人は文学書を読まないだけでなく、一般の政治書、良識的な啓蒙書も読まない。すべて実学の中で学ぶと、「軍人勅諭」が示している精神的空間の中の充足感を身につけるだけ。いわば人間形成が偏頗(へんば)なのである。こういうタイプの政治家、軍人は二つの共通点を持つ。「精神論が好き」「妥協は敗北」「事実誤認は当たり前」。東条は陸軍内部の指導者に育っていくわけだが、この三つの性格をそのまま実行に移していく(その点では安倍晋三首相と似ているともいえるが)。

 私は赤松の言を確かめながら、日本には決して選んではならない首相があると実感した。それは前述の三点に加えてさらに幾つかの条件が加わるのだが、つまるところは「自省がない」という点に尽きる。昭和十年代の日本は、「自省なき国家」としてひたすら驀進(ばくしん)していった。それは多くの史実をもって語りうる。その行き着く先は国家の存亡の危機である。

 

保阪正康

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%9D%E9%98%AA%E6%AD%A3%E5%BA%B7

 

東条英機

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%A2%9D%E8%8B%B1%E6%A9%9F

 

赤松貞雄(陸軍秘書官、首相秘書官)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B5%A4%E6%9D%BE%E8%B2%9E%E9%9B%84

  

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