浅学菲才の嘆息

書籍「草(プル) 日本軍「慰安婦」のリビングヒストリー」を読んで

待望の書籍が日本語に翻訳、出版され、早速購読した。

2017年に韓国で出版され、作者本人によるフランス語版を出したところ、すぐに英語版も出版され、複数の国々で翻訳出版されている。

korocolor.com

キム・ジェンドリ・グムスク(著),都築寿美枝・李 昤京(翻訳):草 日本軍「慰安婦」のリビングヒストリー,ころから,2020年2月14日

原正人(解説),吉見義明(解説),梁澄子(解説),笠原十九司(監修)

 

 日本軍「慰安婦」の犠牲となった朝鮮人の女性が1990年代に実名告白し、元「慰安婦」達が「ナヌムの家」で暮らしている。本作品は、元「慰安婦」の元に何度も足を運び、ナラティブな聞き語りをグラフィックノベルで表現した新たな傑作。日本以上に貧しかった大日本帝国統治下の朝鮮。貧しい幼少期、貧しい家族のため人身売買され、突然日本人達に拉致され重労働と慰安婦としての筆舌に尽くしがたい青春期。そして、朝鮮では幸福(解放・日本の敗戦)後の更なる苦労の連続と現在のナヌムの家での生活を描写。

 2017年8月に韓国で出版され、諸外国でも翻訳出版、様々な賞を受賞し、日本語訳はクラウドファンディングで実現した。日本訳に際し、著者は「日本の民主主義と日本の未来はこのように志を持っている市民がいるからこそ暗くない」と思った、と記している。

 作品では「男尊女卑」、「家父長制」、「ミソジニー(女性蔑視)」、「男性の女性に対する支配欲」、どこかの国の官僚が今も引き継ぐ問題の根底を垣間見る作品でもあり、ジェンダー平等を進める作品として、日本軍「慰安婦」や今も続く世界での戦時性暴力に目を背けず、若い世代にも読んで欲しい作品です。

 

honto.jp