浅学菲才の嘆息

平松伴子さんの『従軍看護師』を読んで

1936年~1945年まで続いたアジア・太平洋戦争第二次世界大戦)では、多くの国民が戦地で従軍した。一方、傷病した兵士を治療・看護する医師、看護師もアジア全域の戦地に送られた。従軍した兵士が招集礼状で、従軍したのに対し、看護師は招集状で従軍した。この『礼』がつかない招集状で、多くの看護師は任意選択も可能な中、時勢の空気により半ば強制的に従軍し、長きに渡り戦後補償も行われなかった。戦地では、軍隊に組み込まれ、医薬品も満足にない中で、治療もできず、筆舌に尽くしがたい体験をした看護師。治療と称し、青酸カリで「処置」の手伝いをさせられ、自らがマラリアに罹患し、死との間で苦しんだ看護師。敗戦後もロシア兵の慰安婦にさせられ、追い詰められて、集団自決をした看護師。送り出した、日本赤十字社は「自社が養成したのは『救護看護婦』であって『従軍看護師』ではないとしている。本書は小説であるが、戦争と医療者を考える一冊であり、是非若い人に読んで頂きたい。

 

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