浅学菲才の嘆息

稲葉陽二さんの「企業不祥事はなぜ起きるのか」を読んで

企業不祥事はなぜ起きるのか

ソーシャル・キャピタルから読み解く組織風土

 

安倍晋三首相が辞任し、菅氏が次期総理候補との情勢。しかし、早くも次期政権は院政、傀儡が見え隠れし、水面下では次期大臣のポストを巡る派閥争いと権力闘争が漏れ伝わる。

本書の指摘が、政治と政争にも通じる様に感じるのは、私だけか?

 

強い絆が会社を潰す!

トップの暴走、とりまき、グループシンク、サイロ・エフェクト、院政・・・

あなたの会社は大丈夫か?

 

東芝の不正会計や三菱自動車リコール隠しなど、企業の存在をゆるがす不祥事が続発している・なぜこのような問題が起きるのか。東証一部上場の百社以上を分析し、「不祥事を起こしやすい会社」をモデル化した業者は、トップの暴走とそれをとめられない社内風土=企業内のソーシャル・キャピタルに原因があるとする。「強いリーダーシップ」や「各部門のサイロ(たこつぼ)化」が危ないなど、意外な知見も。あなたの会社は大丈夫か?

 

企業風土の本質は社会関係資本

 つまり、この場合、本書冒頭でも述べたように企業風土とは「企業内で時間をかけて選抜された幹部職員集団が企業経営を牛耳るネットワークの状態」を指している。ネットワークは社会関係資本の重要な構成要因であるから、換言すれば企業風土とは「過去のしがらみを背負った幹部職員集団の企業内社会関係資本」と理解できる。

 本書の副題にはソーシャル・キャピタル社会関係資本)とあるが、社会関係資本は人や組織のネットワーク、そこから生まれる信頼や規範を意味している。特に、コミュニティにもそれぞれの歴史的・文化的経緯を反映して独自の社会関係資本がある。という点を重視している。住んでいる街によって規範や住民間の信頼が異なり、それが独特の文化を形成し、人々の行動を変える。すさんだ人間関係でゴミだらけの街では、人々は平気でゴミを路上に捨てるが、人間関係が密で規範が存在する街に行けば、普段から平気でゴミをまき散らかしている人もその街に住む人を見て、自然とゴミ捨て場にゴミを捨てるようになる。

 コミュニティを社会に置き換えれば、会社にもそれぞれ独特な社会関係資本があり、それは企業風土と言い換えることもできよう。しかし、会社の場合、我々が生活するコミュニティである街や村とは根本的に違う点がある。それは、会社は利潤という組織の目標が明確にあり、その目標のために社長が社員の査定をして人事権を握っているという点である。つまり、会社というコミュニティの社会関係資本を体現している企業風土は、普通の街の社会関係資本のように住民全員で編み上げるものではなく、社長が編み上げるものである。

 そして、複雑なことは社長が本当のトップではないケースも存在する。場合によっては、社長以外に代表権を持っている役員が多数存在し、代表権を持たなくとも顧問、相談役、最高顧問などのさまざまな肩書きで、社長を凌駕する権力者、つまり会社法の定める権限を超えた、まさに超法規的権限を振るう実力者が存在する。悪いことに、こうした存在は、会社法で定める機関ではないので、不祥事が生じても経営上の責任は一切負わない。 

 

稲葉陽二:企業不祥事はなぜ起きるのか トーシャル・キャピタルから読み解く組織風土.中公新書,2017(3月25日発行)

 

稲葉陽

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A8%B2%E8%91%89%E9%99%BD%E4%BA%8C

 

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