浅学菲才の嘆息

藤野裕子さんの「民衆暴力-一揆・暴動・虐殺の日本近代」を読んで

  本書は、明治新政府対する新政反対一揆自由民権運動と連動する形で起きた秩父事件、日清・日露の両戦役を通じた増税や戦死、厭戦気分の元で警察権力に向けられた日比谷焼き討ち事件、関東大震災時の朝鮮人虐殺事件という4つの出来事を軸として、日本近代の一面を描く。権力の横暴に対する必至の抵抗か、それとも鬱屈を他者へぶつけた暴挙なのか。単純には捉えられない民衆暴力を通し、近代化以降の日本の軌跡とともに国家の権力や統治のあり方を照らし出す。著者を突き動かしたものは、歴史修正主義者が行政にまで入り込んでいる事を痛感せざるを得なかった事が大きいとしている。関東大震災朝鮮人虐殺事件のひとつである亀戸事件について、小池百合子東京都知事は追悼文の送付を取りやめており、あらためて、虐殺の歴史を風化させる動きを見逃さず、歴史の忘却を許さず、くらしと民主主義を守る取り組みが必要である。

 なお、関東大震災朝鮮人虐殺については、朝鮮人女性に対す「性暴力」に言及してある点も注視したい。 

 

藤野裕子:民衆暴力-一揆・暴動・虐殺の日本近代.中央公論社新書,2020(8月25日)

 

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