浅学菲才の嘆息

このブログをチャットGPTに照会したところ「個人の書評とリーディングジャーナルを中心に、日本近現代・アジア歴史、フェミニズム、社会問題など幅広いテーマを扱う、知的志向の深いブログです。戦争史やジェンダー論、社会インフラなど、多角的視点から『読み、感じ、考える』記事が豊富に揃っています。」と紹介してくれました。

浅学菲才の嘆息

三牧聖子さん編集「『アメリカの戦争』と世界危機」を読んで

 2022年のロシアのウクライナ侵略に続き、2026年にはアメリカのベネズエラ攻撃、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃で、石油を巡る世界経済は大混乱。編者の三牧聖子氏の序章と問題提起を受け、12人の論客が縦横に世界情勢と歴史背景を理論展開する。イラン戦争とアメリカを俯瞰しつつ、中東におけるイランの歴史的背景、アメリカのキリスト教福音派とトランプの理論を深掘りする。中国のしたたかな行動原理は、下落しつつある中国経済支える行動戦略ではないか。グローバルサウスによる多国間主義の戦略。逆流する「対テロ戦争」の中で、増加する指導者殺害作戦。第二次世界大戦で空襲と攻撃を受けなかった日本の皇居と国会議事堂周辺。対比する現在の増加する手段を選ばない指導者暗殺は現状変更の大きな成果は得られていない。最後に内田聖子氏が、「軍拡はAIからはじまる」として、警鐘をならす。現在の混沌とした世界情勢を整理する12人の論考に学ぶことは多い。

 

三牧聖子編:「アメリカの戦争」と世界危機-イラン侵攻は何をもたらすのか.岩波新書,2026(6月19日第1冊発行購読)

 

 

 

 

 

前田哲監督の映画「ファーストボイス」を鑑賞して

 1989年日本初となるセクシャルハラスメント裁判である、「福岡セクシャルハラスメント事件」をモチーフに制作された、映画「ファーストボイス」。

 バブルの時代にタイムスリップした懐かしい映像と共に、映画に引き込まれていく。朝日弁護士は、訴訟でも家庭でもジェンダーバイアスに疑問を持ちながら、仲間を増やし、世論を力に、裁判を闘い続ける。裁判でも家庭でも苦労する朝日弁護士は、今も昔もかわらない性別役割分業と女性の家事・育児に苦心しながら、仕事を続け、夫の理解も加わり、大団円。エンディングテロップに、著明なフェミニストのみなさんのお名前を見て、納得。

 

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清水崇さん監督の「八つ墓村」を鑑賞して

 久々に金田一耕助が帰ってくると、心待ちにして9月21日(月)に映画館へ足を運んだ。

 原作の文庫本を読み直し、1977年作品の映画で渥美清の金田一耕助を繰り返し視聴してからの映画鑑賞である。

 私の中での原作は、恋愛と家族愛、尼子一族の財宝を発見する恋愛冒険活劇である。1977年の映画で、野村芳太郎監督ならではのホラー的要素が加わり、今回の作品では視聴者にわかりやすく、時代設定を現代風にアレンジし、洞窟や鍾乳洞の謎と冒険を廃した作品で、最近の映像処理を施したホラー調が強い作品に仕上がっていると感じた。原作を基調として、1977年作品の「たたりじゃー」を取り入れて現代風にアレンジされているが、あまりにも原作とかけ離れているストーリーに違和感を感じずにはおれなかった。

 

 

 

 

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横溝正史の「八つ墓村」を読んで

 映画「八つ墓村」が上映されると知り、本棚の横溝正史覧を確認し、本書を読み直した。消費税3%の時代に購入していた作品である。1977年に渥美清が金田一耕助に分した八墓村では、野村芳太郎監督や橋本忍の脚本で、濃茶の尼や村人が「八つ墓明神のたたり」として、オカルト映画的脚色で、世間を震撼させた。さて、原作はどうか?毛利に追われた尼子一族の言い伝えを縦軸に、実際に起きた岡山県津山の30人殺し(映画「丑三つ村」)をモチーフにした横軸で紡がれる連続殺人事件である。が、しかし、八つ墓村の地下を縦横に走る鍾乳洞や洞窟の探検と主人公を中心とした恋慕と家族愛が織りなす、夢のある冒険・恋愛活劇が私には強く印象に残っている。鬼首村(おにこべむら)で起きた「よる歩く」や「悪魔の手まり歌」の事件を解決して、保養のために寄った八つ墓村の西屋に滞在中の金田一耕助が、東屋を巡る連続殺人事件で、事件を解決へと導くが本書での出番は極めて少ない。村人に追われながらも、自然洞窟に眠る尼子一族の残した財宝を探検して発見する主人公辰也と典子の純愛。著者の横溝正史は、戦時中に岡山に疎開して、意にそぐわない作品を書かされることに嫌気がさし、戦後に疎開中に知った事件や怨恨をテーマに戦後の推理小説と金田一耕助を一躍有名にする。私見になるが、横溝正史の各作品に低通するのは、アジア・太平洋戦争に対する静かな怒りと内省、戦争による親族たちの血肉を争う憎悪と苛烈(かれつ)なトラウマと葛藤を現しているように思う。横溝作品を読み返したい意欲が増すが、一方で積読も増える葛藤に苛(さいな)まれる。

 

横溝正史:八つ墓村角川文庫,1976(4月30日初版発行,1992年7月30日60版発行購読)

 

https://www.kadokawa.co.jp/product/199999130401/

 

 

三浦まりさんと林香里さん編集の「オンナを黙らせる政治とメディア」を読んで

 現在の第4波フェミにズムは、デジタル社会の中で凄まじいバックラッシュにさらされながらも、女性たちは黙らない。心ある女性以外の人々もこの問題は心を痛めている。だからこそ、理論的にそして多面的に、検証した三浦まりさんと林香里さんの本書編集の取り組みは非常に重要である。本書の筆者、編集者たちは、沈黙しない、語り続ける、「言論の自由」の理念を実現しようと「オンナを黙らせる政治とメディア」に抗う。固定化された政治やメディアの中で、女性の声がどのように沈黙されてきたかを見つめ直し、「言論の自由」の現在地を問い直す試みは、課題からの挑戦であり、未来像を描く教科書でもある。スラップ訴訟なども含めた裁判を通じた女性たちのたたかいを通じて、「言論の事由」と「民主主義」を守る闘いとして、本書を学び、連帯し、共にがんばることが重要だ。

 

団結、がんばろう。

 

三浦まり,林香里編集:オンナを黙らせる政治とメディア.花伝社.2026(4月25日第1冊発行購読)

 

www.kadensha.net

 

 

 

 

山本昭宏さんの「彼女たちの『戦後』-12人の肖像」を読んで

 アジア太平洋戦争敗戦から81年。アジア地域に死者2000万人とも言われる被害をもたらした日本の戦後、女性たちはどのように生きたのだろうか。家父長制、男尊女卑、女性差別が色濃く残る時代にあって、俳優、政治家、編集者、デザイナー、作家、アスリートなど様々な職業の女性12名にフューチャーする。女性12人の軌跡を束ねたときに、どのような思想や精神が浮かび上がるのか。そして、そこから我々は何を受けつぐことができるのか。彼女たちの営為を通じて、文化としての戦後民主主義を思考する。とりわけ、鴨居羊子の戦後1960年代の「下着革命」を読んで、前衛的な先見性には感嘆した。戦後80年経っても学生の下着の色まで指定する学校の管理教育に対して、この時代から実用性と個性を追求した「下着革命」。男性の固定概念の価値観から解放されようとし、また女性に受け入れられたからこそ、1970年代の日本のウーマンリブによって女性の社会的役割や権利が拡大した。しかし、今なおジェンダー平等への壁は厚い。この書籍から、今後を展望する手がかりの一つにすることが重要だ。

 

山本昭宏:彼女たちの「戦後」ー12人の肖像.岩波新書,2026(3月19日第1冊発行購読)

 

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P.F.ドラッカーさん著,上田惇生さん訳「ドラッカー名著集4,非営利組織のマネジメント」を読んで

 2011年、「もしドラ(もし高校野球の女子マネージャがドラッカーの『マネジメント』を読んだら)」が流行り、映画の上映と共に書籍、漫画が相次いで発売され、興味津々で映画を視聴し、本や漫画も読んだ。その時、原著も購入したが、途中で挫折し、書籍は紛失。ドラッカーから遠ざかっていた。
 今回、ある方のすすめで、「ドラッカーの非営利組織の経営」を購読した。PTAや教会、病院や施設など非営利組織でも資金は大切であり、寄付などを通じた組織化にとって、何が重要かを多面的に学ぶことができた。何より、実例や対談を通じた組織の課題や改善策は、理路整然としており、書籍が付箋であふれた。第1部はミッションとリーダーシップ、第2部はマーケティング、イノベーション、資金源開拓、第3部は非営利組織の成果、第4部はボランティアと理事会、第5部は自己開発。求められるリーダーの「真摯さ」、リーダーの後継者選びの重要なポイントと犯してはならないこと、権限委譲のポイント、人事と組織、育成におけるストレングスモデルの重要性、女性活躍への期待。どれも重要なポイントがコンパクトにまとまっていて、さらに読み進めやすく、次が読みたくなる。一定の経験を積んだ人は、理解できるだろうが、若い人やこれから組織のリーダーを目指す人にとっては、理解しがたい点もあるかもしれない。中間管理職が、キャリアアップとして読み進めるには、絶好の書籍ではないか。2007年発売でありながら、普遍的テーマとして30年の時を経て読んでも色あせていない。しかし、当時になかったスマホやAIの普及など、現代にどう結びつけるかは我々の課題であろう。

 

P.F.ドラッカー著,上田惇生訳:ドラッカー名著集,非営利組織の経営.ダイヤモンド社,2007(1月26日第1冊発行,2025年4月18日第18刷発行購読)

 

drucker.diamond.co.jp