浅学菲才の嘆息

市川沙央さんの「ハンチバック」を読んで

 某新聞の著者取材記事を読んで興味が湧き、珍しく書店での購読となった。第128回文学界新人賞を受賞したデビュー作で、第168回芥川賞を受賞している。サクッと読んだつもりが、読みにくい漢字や流れを読み飛ばしてしまい、消化不良となり、インターネットで丹念に語句を調べながらの2度読みとなった。

 先天性の筋疾患を患い人工呼吸器と電動車椅子で、施設で暮らす40代の女性釈華。「本に苦しむせむし(ハンチバック)の怪物の姿など日本の健常者は想像もしたことがないだろう」と本を持ってページを自在に繰れる等の健常性を要求する紙の本を憎む。一方で、性に対する羨望、もしくは渇望もさらけ出す釈華。日常生活やデジタル化に伴う、健常者優位主義をマチズモとルビを振る著者の思いとは。QOLやバリアフリーなどが叫ばれて30年以上経過するが、本当に全人間的に公正な社会として発展しているか。駅の改札は、相変わらずマジョリティ有利の右利き仕様になっている点など、社会の矛盾を考える機会となった。

 

市川沙央:ハンチバック.文芸春秋,2023(6月30日第1刷発行,7月25日第5刷発行購読)

 

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