浅学菲才の嘆息

大塚ひかりさんの「ジェンダーレスの日本史 古典で知る驚きの性」を読んで

 ジェンダーギャップ指数後進国の日本。そして、家父長制、男尊女卑、セクハラなど枚挙にいとまがない男性優位社会が続く日本。2023年統一地方選挙で女性議員は多少増加したが、古代や中世では多くの女性が執政を司り、男女はほぼ同権であり、夫婦別姓は当たり前で、女性が優位であった事も伺える。著者は、日本の古典を丹念に読み解き、日本はかつてジェンダーレスであった事を検証する。また、古来より「性に対する寛容さ」は一貫して変わらなかったとし、「性に対する寛容さ」とは無責任な性関係ではなく、「性を大切なものとして重視」していたからではないだろうか。本書は、古典の調査という事もあり、当時の上級社会の手記、書物からの考証であり、当時の庶民がどのようであったかは計り知れないのが残念だが、メイク男子に将軍女子など、明治になって西洋文化キリスト教の教義による文明開化まで、少なくとも日本はジェンダーレスであった事がわかる。本書のテーマであるジェンダーレスをさらに深めたい方は、三橋順子さんの「歴史の中の多様な性(岩波書店)」を是非お読み頂き、現代に蔓延る「伝統的」のウソと、未来へのメッセージを込めた二人の著者の思いを共有して欲しい。

 

大塚ひかり:ジェンダーレスの日本史 古典で知る驚きの性.中公新書ラクレ,2022(11月10日発行購読)

 

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三橋順子:歴史の中の多様な「性」 日本とアジア 変幻するセクシャリティ.岩波書店,2022(7月14日第1刷発行購読)

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