浅学菲才の嘆息

水生大海さんの「最後のページをめくるまで」を読んで

 著者の水生大海(みずきひろみ)さんの作品との出会いは、「社労士のヒナコ」シリーズ3部作で、作品を読んだと言うより労働法制について学ばせて頂いたのが正解かもしれない。職場の同僚にも紹介し、読んでもらって感想を出し合った。そのご縁で、本作品を読んだ。短編5編のオムニバスだが、各短編では各登場人物像の絶妙な描写に加え人間の深層心理を吐露していく表現、引き込まれた刹那、大逆転の結末。推理小説にはありきたりと思われがちだが、水生作品ならではの文章にのめり込む。短編「使い勝手のいい女」では、現在の女性の置かれた立場をジェンダー平等の問題として作品にこめた著者の思いが伝わる。また、オレオレ詐欺の受け子が登場するなど、現代の社会の闇を絶妙な表現で練り上げる作品に時間を忘れて読みふけってしまう作品であった。久々に、読後感の充実感は半端ない。

 

水木大海:最後のページをめくるまで.双葉文庫,2022(6月19日第1刷発行,2023年1月31日第7刷発行購読,2019年7月単行本として発行)

 

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