浅学菲才の嘆息

染谷一さんの「ギャンブル依存-日本人はなぜ、その沼にはまり込むのか」を読んで

 アメリカの精神医学会(APA)の精神疾患診断分類、「DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル」には、2013年から「ギャンブル障害」が掲載され、正解保健機関(WHO)の国際疾病分類第10版(ICD-10)では、すでに「病的賭博」として分類されてきた。

 日本のギャンブルの歴史は古く、西暦689年には持統天皇が賭博としての「双六の禁止令」を出したほど、賭博は常に市井の中で息づいていた。そして、直近のデータでは、2014年時点で「国内にギャンブル依存症が疑われる人口は536万人(厚労省)」。チンコ、パチスロ、闇カジノ、競馬、競輪、競艇オートレース、宝くじ、ロト6など、日本では日常にギャンブルがあふれている状態でもある。そして、ギャンブル依存症者は、家族からの金銭の援助では飽き足らず、最終的には多重債務に陥り、生活破綻する。IR(総合型リゾート)を推進したい日本と財界の思惑は、2020年4月にギャンブル依存症への集団治療が保健適応されたことで幕引きを図っているようにも思える。ギャンブル依存症に陥った5人の詳細な事例紹介からは、生育歴や生活暦の重要性、報酬系となる神経伝達物質ドーパミン放出を分かりやすく解説する。

 なお、韓国では約20年前にパチンコを全廃したことを、ある書評で読んだ。日本も公営ギャンブルなどで、国民の苦難を扇動する事に終止符を打つべく、政治がもっと動くべきである。

 

なぜ韓国はパチンコを全廃できたのか

www.fben.jp

 

染谷一:ギャンブル依存-日本人はなぜ、その沼にはまり込むのか.平凡社新書,2023(7月14日初版第1冊発行)

 

www.heibonsha.co.jp

honto.jp