浅学菲才の嘆息

東畑開人さんの「聞く技術 聞いてもらう技術」を読んで

 「意見を聞かない人」の象徴のように言われ続けた故安倍晋三元総理大臣、「聞いて、聞かない力」と表現された菅義偉元総理大臣、我こそはと「聞く力」を強調した岸田総理大臣の訴えは、国民に届いているのか。どうやら国民には届いておらず、内閣支持率は下落を続け、超低空飛行で迷走している。

 本書の著者は、臨床心理士としての経験を生かし、「聞く技術」と「聞いてもらう技術」を平易にマニュアル化し、専門職でもない一般の人にも読みやすい語句を用い、自信の経験なども交えて紹介する。SNSや動画配信など一方的なスピーカーが跋扈(ばっこ)する現代において、もちろん配信する側と受信する側があるわけだが、リアルな人間関係において、自分の意見を「聞いてもらう技術」とは、結局は相手の話を「聞く技術」あって成り立つと理解した。

 某新聞の書評に組織論に係わる記述として「(社会)活動とは人間関係を作ることなんだ」。それは、「文化や芸術に積極的に接し、人間力を高めることであり、組織を語る自分自身がもっと幅広い知識や考え方を身につけ、人間的に成長することで、より人間関係の輪をさらに大きく広げることができるだろう」としているが、ひとまず一対一の人間関係の構築から気をつけよう。

 

東畑開人:聞く技術 聞いてもらう技術.ちくま新書,2022(10月10日第1刷発行,2022年11月15日第4刷発行購読)

 

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