劇作家・演出家の筆者は、前著「人は見た目が9割」で話題となり、今回はブラッシュアップして、スマホの普及やコロナ禍で「人の見た目」の変化も着目する。
育成場面で繰り返し引用される、連合艦隊司令長官・山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」。上司、先輩が手本を見せる事を本気で行っているか、口先だけの指示、命令になっていないか、簡単な言葉で、とても難しいことを説いていると指摘する。アドバイスが相手に届くためには、「自分に余裕」が必要であると説くが、耳の痛い話しだが、説得力はある。
また近年、育成場面では「褒めて伸ばせ」が強調されるが、本当に褒めるだけで良いか。褒めるときは褒める、叱るときは叱るといった、姿を見せている人を、周囲は「責任間のある人」と見ると説く。
キーボードを叩く音、ボールペンのカシャカシャとノック音、指や関節の音を鳴らす、舌打ちをする、独り言を言う、など音や声で傍若無人な振る舞いを職場で行っていないか。
真の社会人、本物の職人から学ぶべきものは何か、見た目や立ち振る舞いを振り返り、長年社会人として暮らしてきた自身に警鐘をならし、自省・内省・三省の一冊になった。
自分を演じる事は難しい課題ではあるが、重要な言葉がちりばめられたお薦めの1冊。以下、備忘録として、メモをさせて頂きます。ご容赦を。
年をとった優等生は嫌われる
一般社会では、管理職になると、「指示を出す人」「部下にいうことを聞かせる人」という立場がしばらく続く。その時期はあまり部下には好かれないものだ。そういう時ほど、「どう話せば相手が気持ちよくやってくれるか」を考えなくてはならないものだ。もちろん、そんな時期は、人生全体を見渡すと長くない。その後を上手に生きている人は「聞き役」を上手に演じていることに気づくだろう。その人は仕事のできる人から、できない人に至るまで、みんなに慕われているものだ。
アドバイスを届けるにタイミングが重要
山本(五十六)の戒めは、ミスを繰り返す部下から、どうすればミスが減らせるか、を考えた末にでた言葉である。部下がミスを犯す原因を平らかな心で観察できる余裕がないと辿り着けない。
ベテランは、ピンチに明るく振る舞い、中堅が邪険に扱いがちな、優秀な働き手とは言えない若者を励ましながら、戦力に仕立てる仕事をするトールと決めると良い。
アドバイスはどんなタイミングで言っても、相手に届くというものではない。「今なら」というタイミングを見つけるためにも(おそらく双方に)心に余裕がいる。さらに、自分でやってみせて、相手に届くように言って聞かせ、相手がやれる状態をつくり、実際にやれるようになり、自己肯定感を持たせて、内発的にやる気を持つ状態するー。言うは易く、行うは途轍(とてつ)もなく困難である。
「動き」「音」絡みの癖は嫌われやすい
SNSでみつけた言葉に次のものがあった。
「社会に出ると誰も注意してくれないだけで許されるわけではない。そして、あなたが気づいていない扉が音もなく閉じている。
癖を言い得て妙である。
癖は、ストレスから逃れて安心感を得るためにやっている。癖をしていると、気持ちに「つっかえ棒」ができるのである。現実逃避の一種とも言える。しかし、それで知らないうちに扉が閉まることがあるのだ。
ため息は命を削る
「ため息は命を削るカンナかな」-ことわざか川柳かわからないが、これも言い得ていて妙である。ため息をしょっちゅうつく人が、そばにいると、気持ちが萎えてしまう。ため息と一緒に「気」のようなエネルギーが体から抜けていくような気がするのである。