浅学菲才の嘆息

ワタナベ・コウさんの「漫画 伊藤千代子の青春」を読んで

 本書は、2005年に著者藤田廣登さんが学習の友社より出版した著書を元に、漫画家のワタナベ・コウさんが漫画にした作品である。

 主人公の伊藤千代子は、歌人土屋文明の諏訪高女時代の教え子で、千代子の聡明さに将来を期待されていた。決して裕福でない生活の中で、学業を重ね、東京女子大学に入学する。そして、女工哀史などの貧困と格差を目の当たりにし、社会科学に触発され、「空想から科学へ」、「共産党宣言」、「資本論」などの社会科学の学習会を組織し、自己学習も通じて、資本主義による搾取の仕組みや帝国主義、戦争の矛盾、男尊女卑など、今で言うジェンダー平等にも目覚めていく。大学卒業を目前に結婚し、学業から社会変革に傾注し、1928年の三・一五大弾圧で検挙される。獄中での厳しい拷問にも耐え、狭い独房の中でも、獄中の仲間を励まし、学習を重ね、出獄後の社会変革を夢見る。しかし、特高警察の拷問と夫の思想変節という二重苦の中で、拘禁神経症を発症し、松沢病院に入院し急性肺炎でわずか24歳の生涯を閉じる。

巻末の締めは、以下の通り。

日本の侵略戦争に反対して

弾圧された唯一の政党 日本共産党

2022年に創立100周年を迎える

千代子らが身命を賭して灯した

平和と民主主義の火を消してはならない

私たちは生きる権利をもっている

さあ 生を愛するうたを歌おう

 

ワタナベ・コウ:漫画 伊藤千代子の青春.新日本出版社,2021(10月15日初版・予約購入)

www.shinnihon-net.co.jp

honto.jp