浅学菲才の嘆息

タブロイド判「日本共産党の百年」を読んで

 日本共産党創立101年にあたって、2023年10月5日に成書発売の前段としてタブロイド判「日本共産党百年」を購読した。タブロイド判といえ、57ページの労作であり、結党時の時代背景や治安維持法下での困難な時代を経た戦前の壮絶な闘い。戦後の民主主義回復の中でもアメリカ帝国主義によるレッドパージや1950年代の組織問題を克服し、安保闘争や三池闘争などの教訓のもとに第8回党大会で1961年綱領改定の経過は読み応えがある。1961年綱領改定は中露などの干渉を許さず、自主独立論戦を確立し、その後の日本共産党の3回の躍進を後押しする。タブロイド判で、文字も大きくて読みやすく、書籍になる前に一度目を通すことをお薦めしたい。

 なお、日本共産党と国防の視点について以下に私なりの解釈を要約してみた。日本共産党は1922年の結党の22項目の要求にも、要求「九.現在の軍隊、警察、憲兵、秘密警察、等々の廃止。」「十.労働者の武装」などの自国の防衛政策を明記していた。しかし、明治憲法から日本国憲法憲法改正を行う際、憲法の第1章の天皇条項(国民主権)、そして「日本共産党憲法9条のもとでも、急迫不正の侵害から国をまもる権利をもつことを明確にするよう提起」したものの、吉田首相は9条のもとで自衛権ないとの立場をとり、日本共産党はこれを日本の主権と独立を危うくするものと批判して、当時いた5人の日本共産党国会議員は憲法草案の採択に反対した。後に、1994年の第20回党大会では、「憲法9条は、みずからのいっさいの軍備を禁止する事で、戦争の放棄という理念を、極限にまでおしすすめたという点で、平和理念の具体化として、国際的にも先駆的な意義を持っている」として、9条と自衛隊の矛盾をどう解決していくかの問題提起を行った。また、この未解決問題を2000年の第22回党大会では、憲法9条の完全実施にむかう道筋として、自衛隊の段階的解消を目指す党の立場を明確にし、「日米安保条約廃棄の前の段階」「日米安保条約が廃棄され日本が日米軍事同盟から抜け出した段階」「国民の合意で、自衛隊の段階的解消に取り組む段階」という三つの段階で、憲法違反の自衛隊の現実を改革していく立場をあらためた。また、自衛隊が一定期間存在する過渡的な時期に、急迫不正の主権侵害、大規模災害など必要にせまられた場合には、自衛隊を国民の安全のために活用することも明らかにした。今日、日本共産党を「お花畑」理論で押し殺そうとする多くの意見への反証がこの点に要約されていると私は考えている。

 

日本共産党中央委員会:タブロイド日本共産党の百年.日本共産党中央委員会,2023(7月発行)

 

日本共産党の歴史に関する私の理解】

 2022年7月15日に日本共産党は党創立100周年を迎えた。結党時は、大正デモクラシーを背景に水平社等が結成され、自由主義、社会科学、マルクス・レーニン主義なども議論された。結党前夜の1917年から全国的に散発的に起きた労働争議は、1918年に富山で起きた米騒動が新聞で大きく報道され、様々な形で全国的な労働争議等へ発展した社会運動が背景にあり、また結党翌年の1923年の関東大震災では、罪のない朝鮮人や中国人が虐殺され、亀戸事件では共産青年同盟の川合義虎は軍隊の手によって殺害され、甘粕事件では、甘粕正彦らにより無政府主義者伊藤野枝大杉栄なども憲兵に連行され殺害されるという痛ましい事件も起きた。その後、1925年に制定された治安維持法による弾圧、アジア・太平洋戦争の戦前・戦中の厳しい弾圧を受け、党幹部の市川正一や作家小林多喜二、伊藤千代子や飯島喜美、高島満兎など女性党員も犠牲となった。一方で、コミュンテルンとの関係での党存続に関する方針や理論の変遷などの混乱もあった。戦後の日本共産党の再出発と「所感派」と「国際派」の理論闘争は、派閥争いや権力闘争の様相を呈し、ソ連や中国の強力な介入による理論、方針、組織の不当介入もありつつも、ソ連や中国の不当介入を許さず、自主独立の日本における共産党路線を確立し、日本共産党の1950年代問題を解決する形で1961年綱領を持って、基本的考え方や方針を明確にした。1991年のソ連崩壊の際、日本共産党は「諸手をあげて歓迎」と表明し、ソ連崩壊後に明らかになった日本共産党幹部の野坂参三の除名などを行った。ソ連崩壊後の冷戦終了以後は、2大政党論に押し込まれつつ、盛衰を繰り返し、国会に一定の議席を保持し、地方議員3000名程度有する組織を維持している。

 国内外の情勢の変化や中国や北朝鮮など隣国との緊張が高まる中で、日本共産党は綱領等の見直しを行い、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻において、日本共産党の国防、防衛方針に対する一部国民の冷ややかな批判も受けつつ、自衛隊の活用論に対する批判も少なくない。2021年の衆議院選挙では市民連合野党共闘を前面に闘うも立憲民主党と共に議席数は後退し、2022年の創立100周年を迎える参議院選挙でも2議席減の後退となった。日本共産党の見解によれば、野党共闘の後退とロシアによるウクライナ侵攻という「二重の大逆流」との激烈なたたかいの中で、「政治対決の一断面を弁証法的に評価する」という視点で深く分析し、今後の党躍進の方針を検討するという。