浅学菲才の嘆息

中北浩爾さんの「日本共産党 『革命』を夢見た100年」を読んで

 中国共産党結党より1年遅れて、日本共産党はコミュンテルンの日本支部として結成され2022年7月15日に創立100周年を迎えた。スパイ、裏切り、特高警察による弾圧や公安警察による謀略、創価学会からの盗聴事件、暴力革命路線との決別、中露共産党の干渉との闘い、紆余曲折の100年ながら、100年続いた政党の価値は高い。

 著者の中北浩爾氏は、「あとがき」でコロナ禍の2年だったからからこそ膨大な資料をすみずみまで調査、研究し、日本共産党の研究が行えたとしている。また、「はじめに」の冒頭では、「紆余曲折を経ながらも野党共闘は徐々に深まり、共産党の一切の関与なき政権交代を考える事は難しくなっている」としつつ、世界的な共産党の盛衰や変遷も丹念に追い、日本共産党を党外部から俯瞰する。暴力革命の政党として、未だに破壊活動防止法の対象団体に位置づけられているが、著者も指摘している通り、今の日本共産党の活動をみて暴力革命の党に位置づけるにはむりがあると指摘するが同感である。50年問題を克服する過程で中露共産党の干渉を撥ね除け、1961年綱領確立で平和的な民主連合政権樹立を目指す方針や党員の活動は、暴力とは全くの無縁である。

 過去の日本共産党幹部の幾多の問題を詳細に指摘しつつ、党幹部として日本共産党を確立した宮本顕治不破哲三志位和夫へ引き継がれる過程を論評する。組織は、内部牽制の強化は良く言えば強力なリーダーシップ、悪く言えば官僚統制の強化や独断専行となる事は、ロシアのプーチンや中国の習近平が浮かぶであろう。中国共産党毛沢東文化大革命による歴史的失敗より、鄧小平や胡錦濤が集団指導体制にして、権力の分散を続けたが、再び習近平に権力が集中することになったことはプーチンの愚行を繰り返さないか心配である。日本共産党は、党幹部や中央委員を増員しつつ、民主集中制による集団指導体制、党大会前の議案提案や積極的議論を尽くして、党大会で採決行う事への批判は根強い。しかし、自民党の党大会が討論なしのわずか2時間でおわり、派閥争いと権力闘争に明け暮れる様は、企業のトップ争いと同様に、資本主義の歪みか組織であるが故の課題か、多方面での検証や議論が進むであろう?

 最終章では、日本共産党が民主連合政権に加わる前提として、いくつかの課題を挙げ、日米安保が最も困難を極める課題と指摘する。日米安保の問題について沖縄県を除いた地域では、受け止めは低いかもしれないが、米軍基地撤去の民意を示し続けている沖縄県民を思えばこそ、日米安保の問題を乗りこえるべきであろう。少なくとも、外国の要人が日本に来訪するときは、羽田空港か、成田空港で離発着している。にもかかわらず、米国の要人は我が物顔で首都東京にある横田基地から離発着している様をみて、異様な対米隷属と映らないのだろうか。また、統一協会問題が明らかになるなかで、自民党公明党の凋落に終止符を打つ、大きな国民世論が重要だろう。

 所感になるが、日本共産党は庶民の立場に立って、くらしを支え、格差と貧困を是正し、政財界の不正をただし、国民が主人公の民主的、清潔な政治が行える監視役。まっとうな政治のスパイスであり、ここから自力をつけた党勢拡大になるかは、日本共産党の幹部、党員の不断の努力を積み重ね、更なる100年を待たなければならないのかもしれない。いずれにしても、日本共産党からみた正史100年の発刊と購読をした上で、あらためての論評が必要なのだろう。

 

中北浩爾:日本共産党「革命」を夢見た100年.中公新書,2022(5月25日初版,7月10日4版購読)

 

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