浅学菲才の嘆息

岡野八代氏他「日本は本当に戦争に備えるのですか?-虚構の『有事』と真のリスク」を読んで

 本書は、2023年1月19日に「いま、リアリズムとは何か-安保三文書を議論する」というタイトルで、同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究会が主催するグローバル・ジャスティセミナー第67回として開催されたオンラインイベントを元に、編集された書籍である。執筆者全員が触れるとおり、国民議論もないまま、国会議論も抜きにして、いわゆる安保三文書(「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」)が、2022年12月16日、閣議決定という形で公表されたことに端を発している。年末・年始という多忙な時期に、私たち市民にとっては突然発表されたこの決定に著者らが呼応してセミナーを開き、書籍にまとめた。ロシアのウクライナ侵略や台湾有事を煽り立て、日本の防衛力強化を訴えるが、内実は敵基地攻撃能力など、専守防衛から大転換の先制攻撃を可能にする極めて危険な内容であり、予算ありきの武器爆買い計画の内容不透明に国民は気づいていない。

 また、日本の経済状況は、個人の豊かさを示す1人当たりGDBで日本は2022年に台湾、2023年には韓国を下回る見込みにもかかわらず、国民の豊かさより軍事優先とし、社会保障は切り捨てる政策を次々と打ち出し、全く具体性のない「異次元少子化対策」を発表して、国民を愚弄している。

 5人の著者の危機感、「日本はこんな状態ですが、本気で戦争の準備を始めるのですか?」と投げかける。戦争は、いつもご高齢の政財界が結託して、壮年層が指示を出して命令し、生活困窮する青年が犠牲になり、最終的には非戦闘員である高齢者や女性、子供たちに甚大な被害が生じる。ドイツのワイゼッカーの名言を引用すると「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります。」という、歴史の教訓から学べないのだろうか。はたまた、歴史は繰り返されるのだろうか。悪しき歴史を繰り返さないために、我々は学び、知り、理解し、行動することが必要だ。民主主義や表現の自由がある今、行動し、声をあげ、SNSなども活用しよう。NO WAR!

 

岡野八代,志田陽子,布施祐仁,三牧聖子,望月衣塑子:日本は本当に戦争に備えるのですか?-虚構の「有事」と真のリスク.大月書店,2023(4月15日第1刷発行購読)

 

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