浅学菲才の嘆息

鈴木宣弘さんの「世界で最初に飢えるのは日本 食の安全保障をどう守るか」を読んで

 2022年2月に始まったウクライナ戦争で、燃料費や物価が高騰し、食品も例外なく値上げが続き、国民を苦しめている。にも関わらず、政府は防衛費(軍事費)予算を増額し、敵基地攻撃能力を高めるなど安保3文書を閣議決定し、専守防衛をかなぐり捨てて、貧国強兵に驀進(ばくしん)している。本書の著者は、国防安全保障より日本国内の食料・農業を守ることこそが防衛の要であり、それこそ安全保障と説諭する。世界と比較して日本の農業の実態と食の実態を多面的に検証し、批判的意見にも適切に反証する。食糧危機が起きたとき「オスプレイやF35戦闘機で餓えはしのげません」と喝破(かっぱ)する。政府の食糧危機対策も運動場やゴルフ場にサツマイモを植えて、餓えをしのぐ提案がされているが、まるでアジア・太平洋戦争時の愚策であり、日本の食料危機への警鐘をならす作品として、多くの人に読んでもらいたい。そして、「今だけ、金だけ、自分だけ」の新自由主義的な自己責任社会の問題を共に考えて欲しい。

 

鈴木宣弘:世界で最初に飢えるのは日本 食の安全保障をどう守るか.講談社+α新書,2022(11月16日第1刷発行)

 

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