浅学菲才の嘆息

深沢潮さんの「縁を結うひと」を読んで

 著者「深沢潮」さんの作品との出会いは、「翡翠色の海へうたう」であった。その後、SNSで情報を得て「かけらのかたち」を購読し、「深沢潮」さんより短編集なら本書とご紹介を受け、「縁を結うひと」を読んだ。

 在日コリアンの縁談を精力的に取り組み、生計を立ててきた「金江のおばさん」。数々の縁談のとりまとめと自信の家族の苦難。そして、縁を結ぶ過程での、旧来からの朝鮮の文化やしきたりと最近の若者の意識の変化、総連と民団の軋轢。婚活、嫁姑対決や介護の問題など短編ならではの多彩なテーマが続くも「金江のおばさん」が「縁を結うひと」として短編を編み込んでいく。在日コリアンであることを隠し、身を潜める人々。あえて在日コリアンとしてのアイデンティティに目覚める人々。縁談に関する文化やしきたりは、隣国であり同じ儒教国である日本においても鏡像としてとらえられるのではないか?

 

閑話休題 韓日関係

 日露戦争で勝利し、朝鮮半島を植民地化した大日本帝国大日本帝国に虐げられ、仕事や生活のために日本に渡った朝鮮の人々。男性は徴用工、女性は従軍・産業「慰安婦」として、日本に無理矢理連れてこられた朝鮮の人々。日本の敗戦と同時に、朝鮮の人々はちりぢりとなり、帰国がかなわず日本で生活を続けなければならなかった在日コリアンの歴史や苦難をもっと学ぶべきだろう。かつて、百済新羅からの文化を強く受けた日本。豊臣秀吉の朝鮮征伐の後、江戸時代では定期的な交易行われ、幾度かの韓流ブームが起きたとのことだが、今現在の韓流ブームにも重なる。SNSなどでは嫌韓・嫌中の誹謗中傷が問題となっているが、隣国として文化交流を通した良好な国際関係が続くことを願ってやまない。

 

深沢潮:縁を結うひと.新潮文庫, 2016年(2月1日発行 2022年6月5日第2刷発行購読)

本作品は、2015年に新潮社から刊行された「ハンサラン 愛する人びと」を改題したものである。

 

 

 www.shinchosha.co.jp

honto.jp