浅学菲才の嘆息

芝田英昭さんの「占領期の性暴力 戦時と平時の連続性から問う」を読んで

 著者は、原発問題から社会保障医療保険の研究から、本書のテーマ「占領期の性暴力」の研究に取り組んで書籍にとりまとめた。

 1945年8月15日に帝国日本は敗戦し、国民は打ちひしがれていた、もしくは戦争が終わったことに安堵していた。ところが政府は、敗戦後わずか3日目の1945年8月18日には、占領軍による女性の防波堤を作るべく「外国軍駐留地における慰安施設設置に関する内務省警保局長通牒」を都道府県関係部局に発し、「日本人の保護を趣旨」として、「占領軍慰安施設」設置を促し、「慰安」にあたる女性を「芸妓、公私娼妓、女給、酌婦、常習的売淫犯罪者等」とした。集められた女性の中には、戦後の食糧難の中で、事務員募集などの甘言に騙されて集められた女性もいた事を検証する。日本の女性を守るためとしつつ、結果として日本の女性を犠牲にしている矛盾点を明快に紐解き、大日本帝国軍人が行ってきた占領国女性への性暴力の反省もないまま、敗戦国日本で女性を犠牲する暴挙を許すことができるだろうか?

 後半は、日本人や憲法改正にかかわったベテア・シロタなどの回想や日記、書籍等を用いたエゴドキュメントで「占領期の性暴力」を検証する手法は、地に根をはって研究を続けてきた著者ならではの地道な検証作業と言えるであろう。

 いわゆる従軍「慰安婦」は、公私娼妓であり、軍の強制性はなかったとする人たちにとって、「占領期の性暴力」は政府と警察が密接に連携し、さらに今でも存在する事業者の協力なしにはなし得なかった事実をどう受け止めるのだろうか?

 

芝田英昭:占領期の性暴力 戦時と平時の連続性から問う.新日本出版社,2022(12月5日初版購読)

 

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