浅学菲才の嘆息

高麗博物館朝鮮女性史研究会(編)の「朝鮮料理店・産業『慰安婦』と朝鮮の女性たち」を読んで

 1991年、韓国で金学順ハルモニが日本軍「慰安婦」の体験者として証言したことから、戦後46年を経てようやく日本の人々に「慰安婦」問題が認識されるようになった。以降、「従軍慰安婦」問題の第一人者として吉見義明氏らが精力的に研究を進め、軍の強制性の歴史的事実を積み重ねて、日本軍に強制された「従軍」に等しい事実を検証した。本書は、朝鮮女性史研究会の樋口雄一氏らの現地調査に基づく共同研究を論文にしてまとめた「産業慰安婦」の歴史的経過と課題を検証する。明治期の日本の朝鮮侵攻や朝鮮併合により、朝鮮に植民地遊郭や日本式公娼制度を導入し、同時に日本でも朝鮮料理店として、朝鮮人のみならず、日本人も利用する性接待を伴う料理店へと全国展開していく。多くの朝鮮人若い女性が、貧困のどん底から、学校に通えるなどの甘言によって騙されて、日本全国に送り込まれ、炭坑などに従事する朝鮮人男性の性のはけ口として利用され、余りのつらさに自殺者もいた記録が残される。日本の敗戦後その事実を語ることなく、人知れず、本国に戻り、または日本に帰化した朝鮮の人々。当時の日本の基幹産業である産炭地に多くの男性朝鮮人が労働力として送り込まれ、仕事のつらさを博打、麻薬、朝鮮料理店の性接待で紛らわそうとした財閥や事業主。驚くことに松代大本営の陣地構築に際しても、朝鮮料理店が利用された事実。福岡県は、官民が融合した「売春王国」であったことなど、地方の事実の積み重ねも非常に重要だ。

 

高麗博物館朝鮮女性史研究会(編):朝鮮料理店・産業「慰安婦」と朝鮮の女性たち.社会評論社,2021(11月15日初版第1冊発行購読)

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