浅学菲才の嘆息

吉見義明さんの「従軍慰安婦」を読んで

 アジア・太平洋戦争敗戦記念日を前に、過去の過ちに向き合おうと、1995年に出版された吉見義明氏の従軍慰安婦を読んだ。

 1991年12月、はじめて3人の韓国人元従軍慰安婦が、日本政府の謝罪と補償を求めて東京地裁に提訴し、日本人に衝撃をあたえた。しかし、慰安婦は産業慰安婦と混同され、お金欲しさに日本を訴えているなどの歴史修正主義が、被害女性をより苦しめ続けている。著者の吉見義明氏は、従軍慰安婦・戦時性奴隷について、明治期以降の公娼制度、軍国主義の勃興を背景に、「からゆきさん」から軍慰安所の大量設置、そして日本女性も含めて、朝鮮、中国をはじめアジア地域への女性の被害と軍慰安所の拡大を歴史学者として丹念に検証する。各国の女性は甘言や詐欺で集められ、劣悪な生活環境で性奴隷を強いられ、外出の自由も許されず、戦場にも強制的に連行され、敗色濃厚となれば戦地に取り残され、無残な死を遂げた乙女たち。敗戦後は、米国侵略軍の性のはけ口として、敗戦後3日目には米兵向けの慰安所設置が急がれた記録など、軍や政府が女性を性のはけ口として、そして女性の人権を全く無視した丹念な記録に、過去の過ちを振り返る事の重要性を噛みしめた。

 日本近現代史の歴史家として、従軍慰安婦や日本軍による中国毒ガス被害など、史実を丹念に追う著者の研究が進むことを願ってやまない。

 

吉見義明:従軍慰安婦.岩波新書,1995(4月10日第1刷発行,2022年2月14日第27刷購読)

 

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