浅学菲才の嘆息

谷口真由美さんの「おっさんの掟『大阪のおばちゃん』が見た日本ラグビー協会『失敗の本質』」を読んで

 TBSのサンデーモーニングで、歯に衣着せぬコメントで、視聴者の溜飲を下げることでおなじみの大阪のおばちゃんこと谷口真由美さんが、日本ラグビー協会での体験談を赤裸々に綴ります。あくまで谷口真由美さんの言い分なのでしょうが、読み進めていくと谷口真由美さんの理路整然とした経過記録に引き込まれていきます。

 両親の都合で、近鉄花園ラクビー場で育った青春時代。ラグビーのルールを自然と身につけ、またラグビー界との人間関係も深まる中で、半ば強引に日本ラグビー協会に組み込まれる。新リーグ設立に尽力するが、「おっさんの掟」に翻弄され、齟齬にされ、役員解任に至る。自身が憲法学者ゆえに、日本国憲法に照らしてコンプライアンスの向上を進めたにもかかわらず「おっさんの掟」の前に断絶される。最終章では、日本軍部の失敗を組織論的に検証した戸部良一氏らの名著「失敗の本質」を例に、日本軍と重なる部分の非常に多い日本ラグビー協会の組織体質を指弾する。日本の組織に蔓延る組織疲弊の典型を紹介する書籍として、また自分の所属する組織がどうあるべきかを考える1刷となった。

 

閑話休題 失敗の本質

合理的思考よりも優先される年功序列主義、それに伴う上長への行きすぎた配慮、曖昧な命令による組織の迷走-。いずれもラグビー協会で目にした光景です。ワールドカップ南アフリカ(2015年)、アイルランドスコットランド(2019年)という強豪を撃破したことで慢心してしまった点も、日清戦争日露戦争で勝利を収めた「成功体験」から悲惨な太平洋戦争に突き進んだ日本軍を想起させました。

 こう話すと「ラクビー協会はなんて古臭い組織なんだ」と思われる方も多いでしょう。しかし、このような組織の硬直化は、なにもラグビー協会に限った話しではなく、日本の津々浦々でおきているのではないかとも感じます。

同感する指摘でした。

 

谷口真由美:おっさんの掟「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」.小学館新書,2022(2月6日初版第1冊発行,10月29日第4刷発行購読)

 

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