浅学菲才の嘆息

高瀬隼子さんの「おいしいごはんが食べられますように」を読んで

 職場に蔓延するパワハラやセクハラ、食にまつわる同調圧力、不公平な業務分担など、男性一人と女性二人の関係を軸に、転勤してきた男性と、仕事のできる女性の二人の視点と語り口で、3人の人間関係を紡いでいきます。職場内の会話と裏腹に心の声や嘆きは、言葉と相反する心の揺れの中で作品にぐっと引き込まれていきます。仕事の多忙さから食事内容より時間や効率を求めてコンビニ弁当やカップ麺で腹を満たす男性。食事を大切にし、職場のデザートにも気を配る一方で、上司から体調不良などによる早退や休暇などの業務軽減を許されている女性。一方で、体調不良があろうがなかろうがひたすらがんばり続ける女性。仕事量や業務内容と賃金の関係性は平等なのか、体調不良で休むべきか、無理してでも働くべきか、組織・職場での望ましい働き方と管理運営とはなど、我々が働き続けている旧態依然とした日本社会の組織・職場の課題を訴えかける。読み終わっても、心のざわつきが止まらず、心に引っかかりが残る作品となった。

 

高瀬隼子:おいしいごはんが食べられますように.講談社,2022(3月22日第一刷発行,8月5日第八刷購読)

 

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