浅学菲才の嘆息

深沢潮さんの「かけらのかたち」を読んで

 40歳~50歳代の熟年期の男女が、大学生時代のテニスサークル同総会に集まる主役に、そのパートナーもぎこちなく参加する。学生時代に共に過ごした仲間内の人間関係や恋愛関係に、パートナーの過去を知らない同伴者の心の揺れや嫉妬。短編の展開の中で、徐々に明かされていくテニスサークルメンバー達の社会人としての価値観の多様性。結婚して家庭に入るか、独身で仕事を続けるか、共働きとイクメン。妊娠に苦しむ男女の葛藤。SNSに一喜一憂して自分を見失いはしないか。母親の価値観にがんじがらめになった娘の葛藤と人生の選択。女子会の「アドバンテージ フォー」では、4人で囲むランチを巡って家庭の経済力や子ども自慢など、マウンティング合戦が繰り広げられます。隣の芝は青いのか、自分の本当の幸せの価値観を再確認していきます。読み進めると、同世代だから分かる「あるある」が随所に出て来て、リアル追体験に。自分をどの登場人物に映すか、ハラハラ・ドキドキと共にモヤモヤも続きますが、最終話ですっきり晴れ晴れします。

 

深沢潮:かけらのかたち.新潮文庫,2022(9月1日発行)

この作品は、1918年11月新潮社より単行本として発行されています。

 

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