浅学菲才の嘆息

横山拓也さんの「わがままな選択」を読んで

 大学の同級生で付き合い始め、ファミレスチェーン店の店長に就任した勢いで30歳の時に求婚した夫。大手の建設会社に入社し、ラジオのパーソナリティもこなす、会社で初の女性課長代理に昇進した妻。結婚は、子どもは作らず、2人で好きなことを全うしようとした結婚生活9年目。妻に生理が来ないことを告げられ、子どもを持つことに揺れる夫。夫の別居の母親は、腎機能不全から透析の選択を迫られるが、尊厳死を選択し、透析を拒否する。母は父の死後6年が経過し、絵手紙教室で出会ったダンディーな男性が、母子の間を取り持つ微妙な葛藤。

 母の急変に、兄弟とその妻達の母に対する思い、各個人の思いが吐露され、多様な価値観が小気味よく展開される。妊娠と尊厳死の2つのテーマに、生死の価値観、アドバンスケアプランニングをどう捉えるかを考えさせられる作品となった。

 

横山拓也:わがままな選択.河出書房新社,2022(8月30日初版発行)

 

www.kawade.co.jp

 

honto.jp