浅学菲才の嘆息

中島大輔さんの「プロ野球 FA宣言の闇」を読んで

 著者の中島大輔氏の前著「野球消滅(新潮新書)」で指摘している通り、野球は競技人口の減少に歯止めがかからない。その要因は一概には言えないが、「野球はお金がかかる」、「お茶当番など親の負担が大変」などの問題が指摘されている。一方で、指導者側の問題として、①選手への過負荷による故障や怪我、②ドカ食いの強要、③怒号罵声、④エゴイズムによる勝利至上主義など、旧態依然とした体質は、旧大日本帝国軍人の精神論が引き継がれているようにも感じられる。一方で、サッカーの競技人口は安定し、人気を博している点など、今後の野球を含めたスポーツはどうあるべきか。

 本著は、プロ野球のFA宣言について、歴史的経過など議事録による記録がないなかで、当時の関係者や当事者から丹念なヒアリングを行い、歴史的経過を追って検証する。そして、日本国憲法第22条第1項で保障されている「職業選択の自由」が極めて限定されている現在のプロ野球選手の「職業選択の自由=球団選択の自由」について、FA宣言の課題や問題点、アメリカのFA制度との対比も含めて、広く論じている。プロ野球を含めた野球全体の課題を検証し、誰もが楽しめる野球の将来展望を考える。

 

選手は人間であり、商品ではない。だからこそ、労組選手会および全選手がみずから考え、発言し、スト実施の資金を蓄え、FA制度改革のために行動すべきなのだ。自分たちの権利を守り、付加価値を高め、多くの選手が活躍できる野球環境を追求するために。

セ・パ両リーグは着実なグランドデザインを描き、NPB全体としての収益増をめざすべきだろう。MLBの平均年俸はなぜ日本の10倍にまで急騰し、リーグはそれを支える活況を呈することができたか。プロ野球が今後ブレークスルーするヒントは、そこに隠されているかもしれない。

 

選手の流動化は球団にとってマイナスではない。

抜本的な「FA改革」が生み出すその潮流こそ、プロ野球界にプラスの循環をもたらす最大の鍵なのだ

 

第1章 「フリーエージェント制度」導入の舞台裏第2章 ”プロ野球村”の掟とパ・リーグの遠謀

第3章 選手会主導で「現役ドラフト」を制度化すべし

第4章 ”踏み絵”を踏んで変わった男の人生

第5章 いま進むべきFA制度改革への道ー団野村の証言

  

中島大輔:プロ野球 FA宣言の闇.亜紀書房,2020(10月2日第1版第1刷発行)

 

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