浅学菲才の嘆息

赤旗編集局編の「日韓の歴史をたどる-支配と抑圧、朝鮮蔑視観の実相」を読んで

 本書は、しんぶん赤旗に2019年4月16日付~2021年1月13日付までに32回に渡り各時代の専門研究者が執筆したまとめである。当時、読み忘れた回も幾度となくあり、書籍として出版されないかと期待していたところ、絶妙のタイミングで出版された。がしかし、他に読む本が多く、今に至った(反省)。

 本書の巻頭で、「日本政府だけでなく国民にも、戦前に日本が朝鮮半島で何をしたのかの認識がすっぽり抜けている。」と指摘するとおり、私自身も朝鮮半島でのモヤモヤ感を明治からアジア・太平洋戦争の敗戦までの期間の経過を学ぶ機会となった。独立国である韓国の中立宣言を軍事力で圧殺し、植民地化する日本。義兵戦争、3・1独立運動は全国に拡大し、同化政策と収奪強化を行い、一方で皇民化政策のもとで、植民地公娼制を経て日本軍慰安婦制度に結びつく経過など、連綿とした支配の歴史がつながっていく。しかし、戦争協力への抵抗や怠業で抵抗した韓国国民の義憤は尽きないだろう。戦前・戦中に多くの韓国人が日本に移住し、また徴用工や強制連行に連れてこられながら、韓国に戻れない人々を日本の社会保障制度が突き放し、選挙権を剥奪するなどの歴史にいたたまれない気持ちになる。

 1万円札には、福澤諭吉描かれている。福澤諭吉と言えば、「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」と一見すると人間の平等性を述べているのだろうと思ったら、福澤諭吉公娼制度に賛成だったと言うから驚きであり、差別を容認する考えもあったのか?本書では、「福澤諭吉などは、晩年『其の卑劣朝鮮人の如し』とか『朝鮮人見たような奴』などと平然と言った(福翁自伝)と書かれており、人種差別主義者とも思え、本当に1万円札に描いて良いのか、選んだ側の問題を考えずにはおられない。

 

赤旗編集局-編:日韓の歴史をたどる 支配と抑圧、朝鮮蔑視観の実装.新日本出版社,2021(4月20日初版)

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