浅学菲才の嘆息

NHKスペシャル取材班の「少年ゲリラ兵の告白 陸軍中野学校が作った沖縄秘密部隊」を読んで

 本書は、2015年に放送されたNHKスペシャル「アニメドキュメントあの日、僕らは戦場で~少年兵の告白~」の取材記録をあらためて書き起こした作品である。

 沖縄戦では、鉄血勤皇隊ひめゆり学徒隊など、少年達が軍部に随伴して戦場に駆り出されているのは知っていたが、現在辺野古米軍基地問題で揺れている名護市では陸軍中野学校が秘密裏に少年「護郷隊」が組織され、組織的遊撃隊・ゲリラ戦を展開していた。当時の「兵役法」では、17歳以上が招集の対象であったが、兵力不足に悩む軍部は1944年12月、沖縄と一部の地域では14歳以上でかつ志願すれば招集可能になる法令を変更。奇しくも沖縄戦の組織的戦闘が終結した1945年6月23日には「義勇兵役法」を日本全土に交付し、男子は15歳上、女子は17歳から通常の兵役とは別の義勇兵として招集し、「国民義勇戦闘隊」として戦争に動員できる法令である。本土決戦、一億層玉砕を貫徹する戦闘員の大量招集である。

 米軍の記録によれば、米軍は沖縄でゲリラ戦を行う「GOKYOTAI」非常に恐れていた。そして、志願でもない少年達は理由も聞かされず強制的に護郷隊に従軍させられ、軍国教育の続いた少年達は純真に戦闘に参加し、多くの犠牲者がでた。待ち合わせの時間に遅れたことを理由に制裁的に複数の兵隊から射殺された少年。傷病兵や戦時神経症等の精神疾患のある兵隊は、軍医が射殺して、処理した証言も語られる。映画などでは、毒入りミルクや手榴弾による自死が伝えられるが、友軍や軍医から射殺される少年達に胸が痛む。さらに召集兵と違い、無給で従軍させられた少年達。

 敗戦濃厚な日本本土では、731部隊と同じ秘密部隊である陸軍中野学校出身者が九州を中心に全国へ配置され、諜報・防衛・防諜作戦を展開し、少年兵や在郷軍人達と本土防衛のゲリラ訓練を行い、終戦を迎える。秘密組織を語ることの少ない証言者達は戦争の愚かさを口々にする。「ひとたび、走り出すと止められない。そんな戦争の狂気を最期に伝えるべきだ。」

 IS(イスラム)の少年兵を画面の向こうの出来事だと思い、批判している人たちは、日本軍が犯した過去を知っているだろうか?

 

番組の最期のコメント

70年前、最も大切な子供を戦争に利用した、日本。

少年達が見たは、戦争が「心」を変え、「命」を奪い去るという現実でした。

ひとたび戦争になれば、国も、人も、変わってしまう-。

「あの日」を繰り返してはならない。今、少年兵達は訴えています。

 

「二度と戦争にだけは行きたくない。戦争に近づくような道を、戦争からかけ離れた選択肢出っても、選択しないようにしないと。小さなのを重ねていくとね、ひどい目に遭いますから」

 

NHK取材班:少年ゲリラ兵の告白 陸軍中野学校が作った沖縄秘密部隊.集英社,2019(8月1日発行購入)

 

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