浅学菲才の嘆息

中島大輔さんの「山本由伸 常識を変える投球術」を読んで

 2023年のWBCは日本中で大いに盛り上がり、大谷翔平らと同じ先発投手陣の一角を担った山本由伸。2021年、2022年シーズンでは、2年連続の投手四冠を達成、沢村賞と最優秀選手賞にも選ばれ、オリックスバファローズの日本一にも貢献した。2022年オフには推定年俸も球界最高に到達し、来年はメジャー挑戦ともささやかれる山本由伸。

 著者の中島大輔氏は、野球を中心としたスポーツ全般の旧態依然とした、精神論や経験主義、指導者のハラスメントにも警鐘を慣らすジャーナリストとして地道に活動を続けている。今回は山本由伸の野球人生をふり返り、山本由伸の独自のトレーニング方法や強靱なメンタリズムを紐解く。少なくないプロ野球選手が、監督やコーチの型にはめた指導や個々人に適さないフォームの改造により、芽を潰された選手がいることに警鐘を鳴らす。ウェイトレーニングによる筋力強化が主流となる中で、独自のトレーニングメニューで自身のボディスキーマを意識し、山本由伸自身が長期にわたって選手生命を維持するために身体ケアを視野に入れた投球術を検証する。

 野球を中心にスポーツは楽しむことが大事であるが、自身の長期展望を見据え、自らのケアを考えるクレバーな山本由伸投手の考証は、今後のスポーツに少なくない影響をあたえるものと考える。

 

中島大輔:山本由伸 常識を変える投球術.新潮新書,2023(2月20日発売購読)

 

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