浅学菲才の嘆息

朱野帰子さんの「会社を綴る人」を読んで

 作家、朱野帰子さんの作品でドラマにもなった「わたし、定時で帰ります」3部作は、IT企業働く労働者の辛労辛苦を、インパール作戦忠臣蔵女工哀史を対比しながら現在のクリエイティブなIT企業の光と闇を小気味よい展開で綴り、会社組織で働く女性の活躍を描いた。

 本作は、帯のキャッチコピーによると総務部の男性ダメリーマンと開発部の人気ブロガーOLの会話を中心に、杓子定規の総務部上司、営業のハラスメント課長、器の小さい3代目社長、などを交えた会社あるあるの作品である。自称冴えないダメリーマンが、出来る兄の助けで企業に就職したものの入社即戦力外通告を突きつけられ、総務部でのコピーやスキャンすらままならない。その一方で唯一の取り柄である文書力で、会社を綴っていく。入社時に65年社史を熟読して入社し、社長や上司を誰よりも知りつくし、会社の良い面と伝統でがんじがらめになる矛盾に悩み抜く。いよいよ会社が資本業務提携で飲み込まれるなかで、65年史の続きの2年間の社史を綴る。会社とは組織における文書の重要性とは、伝統と職場風土とは、会社、職場、組織を振り返る、さすが朱野帰子さんらしい作品に脱帽。

 

朱野帰子:会社を綴る人.双葉社,2022(9月11日第1刷購読,2018年11月単行本刊行)

 

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