浅学菲才の嘆息

平井美帆さんの「ソ連兵に差し出された娘たち」を読んで

 アジア・太平洋戦争では、日本の貧困や飢餓から村をあげて旧満州への移民政策が推し進められた。移民政策と同時に現地に住む中国人の住居を接収し、日本人に追い出された多くの中国人が困窮した。敗戦と同時に、中国人はかつて日本人が行ったとおり、日本人への略奪や暴行があいつだ。加えてソ連軍の進行で、帰国もできず対応を迫られる村人たち。相次ぐ集団自決の中、黒川満蒙開拓団では娘たち15人を「性接待」としてソ連軍に提供し、村人の人柱にした。呼び出し係、事後の洗浄係、人柱としての娘たち。性病や感染症で亡くなる娘たち。やっとの思いで、帰国に途につくが、渡河する交換条件で蹂躙される娘たち。命からがら帰国しても、地域で蔑まれる娘たち。それでも生きて、必至に働き、過去の苦しみを抱き続ける娘たちの声を。戦争は、非戦闘員が犠牲になる。ウクライナの惨状に胸を痛めながら。

 

2021年第19回開高健ノンフィクション賞受賞作

 

傷つき帰る 小鳥(娘)たち

羽根(心) 休める 場所もなく

冷たき眼  身に受けて

夜空に祈る 幸せを

 

平井美帆:ソ連兵に差し出された娘たち.集英社,2022(1月30日第1刷発行)

 

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