浅学菲才の嘆息

稲田豊史さんの「映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレーコンテンツ消費の現在形」を読んで

 なぜ映画や映像を早送り再生しながら観る人がいるのか。なんのために。それで作品を味わったといえるのか?著者の疑問から、近年の若者たちの置かれている現状や背景から考察する。とにかく忙しい、時間がない、一方でスマホのSNSでは24時間縛り付けられ、作品に対する感想や意見が溢れ、有料動画視聴サイトには一生かけても見終わることない大量かつ定額で視聴できる。大学生を中心とした若者世代にとしては、仲間の和を維持するのが至上命題。とにかく共感し合わなければならないと、作品を鑑賞するのではなく、情報収集のコンテンツとして消費せざるを得ない重苦しさ。とにかく、コスパ(対費用効果)・タイパ(対時間効果)を追求し、スマホに話しかければ全てが解決するインターネットの普及。時間のかかる遠回りする作業は許されない、せっかちな世の中。かつて、レコードの普及には生演奏が重視され、ビデオの普及では映画の臨場感の欠如に警鐘を慣らしたが、今現在享受している実態はどうか?今を生きる人たちに対して、どう接していくのか、どうしたら学校や職場で成長できるのか、重要な問題提起であることに間違いはない。

 

田豊史:映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレーコンテンツ消費の現在形.光文社,2022(4月30日初版1冊発行,6月25日初版6冊購読)

 

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