浅学菲才の嘆息

武井彩佳さんの「歴史修正主義 ヒットラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで」を読んで

 「アウシュビッツガス室はなかった」「南京事件は捏造」「慰安婦はみんな職業的な娼婦」といった話しを耳にしたことがあるだろうか?歴史的な事実の全面的な否定を試みたり、意図的に矮小化したり、一側面を誇張したり、何らかの意図で歴史を書き換えようとすることを「歴史修正主義(revisionism)と呼ぶ。日本の団体の中には「歴史戦」などと叫び、歴史修正主義を「戦い」とする愚かな発言が物議を呼んでいる。

 本書は、世界史が専門の著者が、あえて日本の歴史には触れず、世界史の中での歴史修正主義との闘いを、各国の情勢や司法の判断などの事案も交えて紹介する。ニュンベルグ裁判、ホロコースト否定論者の勃興とツンデル裁判、アービング裁判などを通じて、ヨーロッパで進む歴史修正主義への法規制が歴史的経過と共に整理される。

 著者は、「歴史修正主義は、表面上は歴史の問題を扱っていても、本質的には政治的・社会的な現象であり、歴史修正主義はむしろ社会と民主主義との関係から考える必要がある。」との説明には、我々が考えるべき点ではないだろうか?

 

武井彩香:歴史修正主義 .ヒット-ラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで.中公新書,2021(12月10日第3版購読)

 

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