浅学菲才の嘆息

宮沢和史さんの「沖縄のことを聞かせてください」を読んで

 パートナーがTHE BOOMのファンであったこともあり、ドライブで聴き、カラオケで歌っている曲である位の認識でしかなかった「島唄」。著者の宮沢和史さんが「島唄」を発表して30年の節目に本を書かれたことを新聞記事で見て購読した。

 宮沢和史さんは沖縄戦で犠牲になった少女たちの「ひめゆり資料館」に出会あったのをきっかけに、沖縄で様々な人と出会い、沖縄の歴史や文化を学び、悩み抜いて発表した「島唄」。「ヤマトの人間がこの曲を発表して良いのだろうか」との思いとは裏腹に、空前のヒットとなった「島唄」。もちろん一定の批判も受けつつ歌い継がれ、地元沖縄にも受け入れられた「島唄」。更に沖縄の島々のことを真摯に学び続けた歳月と、音楽家として計り知れない影響を受けた歴史と文化を10人との対談をまとめた作品である。宮沢和史さんがいかに沖縄を愛し、深く理解しようとしているかは、各ページに丁寧な解説や出典を表示して、読者の理解を深めやすくしている点にも現れている。

 「僕があの歌(島唄)で言いたかったのは、『この島に永遠に戦争があってはいけない』という、一つだけだった。」の思いはこの書籍を貫く一本の柱ではないか。日本と中国のダブルスタンダードで活路を開いた琉球王朝時代。薩摩藩に搾取され、大日本帝国アメリカ、日本に虐げられてきた沖縄の歴史と文化を広く、深く学ぶ貴重な一冊となった。

 沖縄への往復で読み終えるつもりで読み始めたものの、492ページの重厚で濃厚な内容に苦戦し、結局帰宅翌日の読了も充実感に満たされている。

 

宮沢和史:沖縄のことを聞かせてください.双葉社,2022(5月1日第一刷発行,6月15日第二冊発行購読)

 

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