浅学菲才の嘆息

平良隆久さんの「まんがでわかる 日米地位協定」を読んで(3)感想

  高校1年生の主人公は、父親の運転する自動車でドライブ中、米兵が運転する自動車と事故となり、不合理な事故処理の原因が「日米地位協定」にあることを経験する。その事故をきっかけに、夏休みの自由研究で「日米地位協定」に取り組む事にし、クラスメイトを巻き込んで、「日米地位協定」の歴史や日本に不都合な協定の内容を調べていく。首都圏を含む広い空域を米軍に支配されている「横田ラプコン」の問題や米軍の軍事機密優先、米軍敷地内の環境問題など、次々と不合理な「日米地位協定」を明らかにし、結論は日米両国でデフコンを取り決める事が必要だと説く。しかし、安保条約が前提での結論であり、2019年に山本章子氏の著書「日米地位協定」(中公新書)とも同じ立場であることが、個人的には非常に残念です。しかし、ゴルゴ13の原作スタッフが著者であるため、日本の専守防衛能力に詳しく、「反戦軍事学」の立場から見れば、情報・哨戒・防衛など、防衛の面で日本がいかに高度な機能を有し、高額な防衛費を支払っているのかを知る面では参考となる1冊ではないでしょうか。

 

平良隆久:まんがでわかる日米地位協定.小学館,202088日初版第1冊発行)

 

www.shogakukan.co.jp

honto.jp

平良隆久さんの「まんがでわかる 日米地位協定」を読んで(2)朝鮮特需の幻想

 

朝鮮特需で、本当に当時の日本人の生活が改善したのか?

 

まんがでわかる

日米地位協定

高校生が日米地位協定を調べてみた!

 

日本を被うアメリカの力に迫れ

 

著者:平良隆久

「ゴルゴ13」原作スタッフ平良隆久吠える!!

作画:藤沢勇

監修:前泊博盛

 

●日本人の生活まで苦しめた日米地位協定

(前略)

 確かに日本は「特需」で米国から相当額の利益を得た。だが、教科書ではこの点だけを特別に書いているので、日本は米国のお陰で復興したと思っている人が多いのだ。しかし、貿易は出と入りの収支でみなければならない。戦前、日本の最大貿易の相手国だった中国との貿易が、米軍の対中貿易禁止令でとめられてしまったのだ。その為に大幅に輸送費がかかる米国から、中国よりずっと値段の高い資源を買わされたのである。帝国主義とは、軍事力でその市場を強引に開放させ、自国の製品を売りつける市場にする事だが、米国は見事にこれをやってのけた訳である。

(後略) 

 

平良隆久:まんがでわかる日米地位協定.小学館,202088日初版第1冊発行)

 

www.shogakukan.co.jp

honto.jp

平良隆久さんの「まんがでわかる 日米地位協定」を読んで(1)米軍の北朝鮮への先制攻撃はない

アメリカと北朝鮮の関係を軍事から知る

 

 

まんがでわかる

日米地位協定

高校生が日米地位協定を調べてみた!

 

日本を被うアメリカの力に迫れ

 

著者:平良隆久

「ゴルゴ13」原作スタッフ平良隆久吠える!!

作画:藤沢勇

監修:前泊博盛

 

 

  • 米軍の北朝鮮への先制攻撃はない

米軍が日本で低空飛行で事故を起こした、1994年は北朝鮮の核開発が明らかになり、当時の米国大統領のクリントンが、北を先制攻撃をしようと計画した時だ。しかし、クリントン政権にいたウイリアム・ペリー国防長官が、部下に戦争のシュミレーションをさせた。その結果90日以内に在韓米軍5万2000人、韓国軍49万人、そして民間人を入れると100万人以上が死傷するとの数字が出たのだ。もし、北朝鮮の核施設などに対して、精密攻撃ができたとしても、全面戦争につながる可能性が高く、甚大な人名の損失が予想されたのである。

クリントン大統領は、その為にこの攻撃を止めざるを得なくなった。日本のマスコミ人の中には、あの時に米軍が攻撃していれば、今の様に北朝鮮が核を大量に保有する事は無かったと思っている人も多いようだが、それが不可能だからこそ、米軍は先制攻撃を止めたのだ。

北朝鮮保有しているVXガスは、たった1ミリリットルで人一人の致死量がある。2リットル入りのペットボトルで、何と20万人もを死傷するのだ。米軍は北朝鮮は、この最強のVXガスを始め化学兵器を約5千トンも保有しているとみている。アメリカに大量化学兵器保有の嫌疑をかけられ、滅ぼされたイラクフセイン大統領は、実は大量化学兵器保有していなかった。しかし、フセイン政権とは違って、北朝鮮は確実にどのガスを保有しているのだ。そして、何千発もあるロケット弾にそれを積んで、韓国を一斉攻撃する事が可能なのである。

 

平良隆久:まんがでわかる日米地位協定.小学館,202088日初版第1冊発行)

 

www.shogakukan.co.jp

honto.jp

稲葉陽二さんの「企業不祥事はなぜ起きるのか」を読んで

企業不祥事はなぜ起きるのか

ソーシャル・キャピタルから読み解く組織風土

 

安倍晋三首相が辞任し、菅氏が次期総理候補との情勢。しかし、早くも次期政権は院政、傀儡が見え隠れし、水面下では次期大臣のポストを巡る派閥争いと権力闘争が漏れ伝わる。

本書の指摘が、政治と政争にも通じる様に感じるのは、私だけか?

 

強い絆が会社を潰す!

トップの暴走、とりまき、グループシンク、サイロ・エフェクト、院政・・・

あなたの会社は大丈夫か?

 

東芝の不正会計や三菱自動車リコール隠しなど、企業の存在をゆるがす不祥事が続発している・なぜこのような問題が起きるのか。東証一部上場の百社以上を分析し、「不祥事を起こしやすい会社」をモデル化した業者は、トップの暴走とそれをとめられない社内風土=企業内のソーシャル・キャピタルに原因があるとする。「強いリーダーシップ」や「各部門のサイロ(たこつぼ)化」が危ないなど、意外な知見も。あなたの会社は大丈夫か?

 

企業風土の本質は社会関係資本

 つまり、この場合、本書冒頭でも述べたように企業風土とは「企業内で時間をかけて選抜された幹部職員集団が企業経営を牛耳るネットワークの状態」を指している。ネットワークは社会関係資本の重要な構成要因であるから、換言すれば企業風土とは「過去のしがらみを背負った幹部職員集団の企業内社会関係資本」と理解できる。

 本書の副題にはソーシャル・キャピタル社会関係資本)とあるが、社会関係資本は人や組織のネットワーク、そこから生まれる信頼や規範を意味している。特に、コミュニティにもそれぞれの歴史的・文化的経緯を反映して独自の社会関係資本がある。という点を重視している。住んでいる街によって規範や住民間の信頼が異なり、それが独特の文化を形成し、人々の行動を変える。すさんだ人間関係でゴミだらけの街では、人々は平気でゴミを路上に捨てるが、人間関係が密で規範が存在する街に行けば、普段から平気でゴミをまき散らかしている人もその街に住む人を見て、自然とゴミ捨て場にゴミを捨てるようになる。

 コミュニティを社会に置き換えれば、会社にもそれぞれ独特な社会関係資本があり、それは企業風土と言い換えることもできよう。しかし、会社の場合、我々が生活するコミュニティである街や村とは根本的に違う点がある。それは、会社は利潤という組織の目標が明確にあり、その目標のために社長が社員の査定をして人事権を握っているという点である。つまり、会社というコミュニティの社会関係資本を体現している企業風土は、普通の街の社会関係資本のように住民全員で編み上げるものではなく、社長が編み上げるものである。

 そして、複雑なことは社長が本当のトップではないケースも存在する。場合によっては、社長以外に代表権を持っている役員が多数存在し、代表権を持たなくとも顧問、相談役、最高顧問などのさまざまな肩書きで、社長を凌駕する権力者、つまり会社法の定める権限を超えた、まさに超法規的権限を振るう実力者が存在する。悪いことに、こうした存在は、会社法で定める機関ではないので、不祥事が生じても経営上の責任は一切負わない。 

 

稲葉陽二:企業不祥事はなぜ起きるのか トーシャル・キャピタルから読み解く組織風土.中公新書,2017(3月25日発行)

 

稲葉陽

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A8%B2%E8%91%89%E9%99%BD%E4%BA%8C

 

www.chuko.co.jp

honto.jp

保坂正康さんの「昭和史の急所 」を読んで(5)私が考える「昭和天皇の戦争責任」

 

昭和天皇の戦争責任」ひとつの論考より

  

 昭和前期の戦争を体験した世代の人たちの心底には、政治的、思想的な信条を別にして<あの先生の戦争責任は誰にあるのか。昭和天皇にも戦争責任があるのではないか>との疑問があるということである。

 こうした質問を、私は必ずといっていっていいほど受ける。私の答えは明確である。

 <昭和天皇に「戦争責任」はある。昭和陸軍が、天皇を利用したとか、その意に反しての行動だったとか、とにかく各様の論があるが、そこには重要な視点が欠けている。天皇の名において行われた戦争である以上、昭和天皇には戦争責任は存在する。これは政治的、思想的次元の理解ではなく、社会的常識の枠内のことである。問題はこの責任をどのように峻別して、どのように問うていくかという点にある。開戦、敗戦、あるいは軍部の行動を是認して解体していくプロセスか、とくにかくこの責任を計画にしておくことが重要だと思う>

 むろん反発する戦争体験者もいる。しかし、私はそのような言にふれるたびに、戦争責任を認めないのは、昭和天皇に対する重大な侮辱ではないかと思う。なぜなら、その考え方は天皇を意思をもつ存在として認めていないと語っているに等しいからである。現実に昭和天皇自身が、戦争責任を痛感していたし、それに類する言葉を至るところで述べているからだ。

『昭和陸軍の研究(下)』(562

 

保坂正康さん

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%9D%E9%98%AA%E6%AD%A3%E5%BA%B7

 

保坂正康:昭和史の急所.朝日新聞出版,2019(5月30日第1刷発行)

 

publications.asahi.com

honto.jp

保坂正康さんの「昭和史の急所 」を読んで(4)兆しをとらえ、歴史に学ぶ

 

兆しをとらえ、歴史に学ぶ

  

 不必要に悲観する理由はないが、気味の悪い徴候もある。歴史を見ると、民主主義が疲弊すると、必ずファシズムが出てくる。立憲政治、国会がちゃんと機能しなければならない。

『選択』2018.4(3)

 

保坂正康さん

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%9D%E9%98%AA%E6%AD%A3%E5%BA%B7

 

保坂正康:昭和史の急所.朝日新聞出版,2019(5月30日第1刷発行)

 

publications.asahi.com

honto.jp

保坂正康さんの「昭和史の急所 」を読んで(3)日本人だからこそ誤りを認める

 

内省・自省を深める

  

 「日本人なのになんでお前は日本を批判するのかと」という人がいます。しかし、私は日本人だからこそ、誤りを誤りとして認めなければならないと思っています。そして、そこから教訓を引き出してこなければいけないと。そうしなければ、われわれの文化と伝統にキズがつくと思うからです。

『日本の戦争 常識のウソ』(223

 

保阪正康さん

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%9D%E9%98%AA%E6%AD%A3%E5%BA%B7

 

保坂正康:昭和史の急所.朝日新聞出版,2019(5月30日第1刷発行)

 

publications.asahi.com

honto.jp