浅学菲才の嘆息

キム・ジヘ著、伊怡景訳の「差別はたいてい悪意のない人がする-見えない排除に気づくための10章」を読んで

 差別も特権も、ありふれているからこそ見えない、韓国で16万部のベストセラーが邦訳されました。

 「自分は差別などしていない」本当にそうか。職場では以前から「権威勾配をなくし、平等な職種関係を構築しよう」と職場への周知を呼びかけているが、本当に職場において権威勾配なく職場連携が行われているか。本書は、韓国における問題提起ではあるが、世界においてもトークニズム、特権、優越理論、間接差別、差異の政治など、差別に関する多様な理論が適切な事例とともにわかりやすく紹介されている。よって、個人レベルから構造的なレベルまでの差別について考える好材料になっている。日本でも、潜在的優位性、家父長制、男尊女卑、権威勾配ヒエラルキーなど、日常生活や社会関係から見直し、あらためて民主主義、人権尊重を考え直すきっかけとなる。また、ヘイト表現をやめる運動など、どのように人権運動に携わるかの模索も提起され、「真に平等」に接する人間関係の構築を考える1冊になるのではないか。

 

キム・ジヘ(著),伊怡景(訳):差別はたいてい悪意のない人がする-見えない排除に気づくための10章.大月書店,2021(8月23日第1刷発行)

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