浅学菲才の嘆息

岡野八代さん訳・著「ケアするのは誰か? 新しい民主主義のかたちへ」を読んで

 

 ケア労働者の視点から、ジェンダー平等を考え、ケアに満ちた社会を目指す政治理論入門書となっている。

 第3章に「フォルブルの寓話-競走とケア」では、

  A国は、走れるものは、全力で走れ

  B国は、性的分業

  C国は、共にケアする/ケアと共に

 A国は、極端な格差拡大となり、脱落者が続出し、競技に負けることを確信する。B国は女性蔑視が深刻化し、女性たちは男性たちの態度にあきれ、ストライキに入り、競技を続けられなくなる。C国は、みんながケアを負担することで得られる自由と平等は、構成員の間に連帯感も作り出した。

 こうして、競技の勝利は、C国にもたらされるたのだった。

 B国についての性差別は、「走る代償として女性を支配できる、といった動機が必要とされたのだった」。支配の理論こそ、世界で蔓延る女性蔑視、男尊女卑ではないか?ケアを通じて、全世界の人が、自由と平等を勝ち取るチャンスになるのではないか。

 

ジョン・C・トロント(著),岡野八代(訳・著):ケアするのは誰か?新しい民主主義のかたちへ.白澤社(発行),現代書館(発売),2021(2月15日第1版第3刷発行) 

 

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