浅学菲才の嘆息

下町ロケット ガウディ計画 私が思う名言集

先日、「下町ロケット ガウディ計画」を読み、非常に感動した。

また、人として、組織の人間としてどうあるべきかを深く考えさせられた。

これからの大事な人生の名言として、備忘録的にまとめておくことにする。

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○P301

貴船:医療というのはどこまでいっても、失敗による経験の蓄積、仮説と実証の繰り返しなんだ。」はいいとして、データの改ざんやねつ造で得た結果は、後に更迭・左遷人事・都落ち人事を食らうのだが貴船教授

⇒哲学で言うところの弁証法と置き換えよう。

 

○P317

官僚的と言われる帝国重工の発想は縦割りだ。他部門が管理する領域には踏み込まないのが不文律だ。

脱官僚主義を謳った民主党政権だったのだが、官僚達に疎まれ、官僚によって政権を転覆されたか?

 

○P388~399

一村:私なんかは地方の国立大学出身で最初から関係ないですが、旧帝大系は学会を牛耳る派閥ですから。若い頃はともかく、段々と出世していって権力を持ち始めると、その魔力に取り憑かれてしまうのかもしれません。

佃社長:だったらね、先生、それは医者の世界だけじゃないんですよ

官僚主義、出世主義、権力主義、あぁ、奈良時代以降の官僚機構のなれの果て、最たるものは戦時中の日本の軍属も、そして今の日本社会、政治・政党・企業でも。多くの職場も例外ではないだろう。

 

○P369

唐木田:勝負に勝って、試合に負ける-そんな感じの結果でしたね。

⇒あるある。

 

○P370

佃社長:お前らの技術を生かすだけの知恵が、オレにはなかった。これはオレの責任だ。すまん。

⇒責任を他者に転嫁せず、最終責任はトップ幹部がとる。立派である。そして、「すまん」と素直に謝ることのできる対応。そういうトップには優秀なスタッフが集まるだろう。

 

○P384~385

佃(社長)はいった。「倒産したときに、夜逃げしてしまう社長と、ちゃんと居残って謝罪する社長がいるじゃないですか。それと同じだよ。後は、経営者の器の問題だと思うね。」⇒いや立派。まさにその通り。真逆となった、山一証券の倒産劇を思い出したよ。

 

○P385

佃(社長)はそう断言した。「今時誠実さとか、ひたむきなんていったら古くさい人間と笑われるかもしれないけど、結局のところ、最後の拠り所はそこしかないんだよね。」

⇒得心してリスペクト。

 

○P401

三原:石坂君、君は椎名社長と随分、会食を重ねているそうだな

収賄であり、懐柔であり、組織の私物化である。

 

○P404

佃(台詞の抜粋):みんなの努力が正当に報われたと思う。ありがとう。研究員から社長になって、もう何十年以上になる。無我夢中でやってきたけど、その中から学んだこともある。会社って、こうやって成長していくものなんだ。みんなと同じ成功体験をくぐり抜け、時に何かを失いながら、何かを得ていく。結局は、その繰り返しなのかも知れない。それは楽な道じゃ無いと思う。だからこそ、お互い励まし合って、支え合っていかなきゃいけないと思う。今日は、それを学んだ。これからも頼むぞ。そして洋介、アキちゃん-

⇒成功を素直に喜び、お礼を言えるか?ここに真のリーダーの凄味がある。そして、成功と成長の過程をロジカルに説明し、しかし、つながり(コネクション)の大切さを強調することを忘れてない。そして、「学び」としてまとめる。なかなかできない事だろう。最後に、個人名を挙げて評価していることも特筆したい。集団で個人名を挙げられることは、評価が直に伝わり、モチベーションが数段アップルするだろう。嫌いだが田中角栄から学べ、個人を知ること、そして姓ではなく名で呼ぶ習慣。

 

○P415

佃社長:うちのグループは小さい会社ばかりかも知れません。ですが、このガウディは、大勢の子どもたちが、完成し、臨床で使われる日を待っているんです。命の尊さを、会社の大小で測ることができるでしょうか。私はできないと思う。どんな会社であろうと、人の命を守るために、ひたむきに誠実に、そして強い意志をもって作られたものであれば、会社の規模などという尺度ではなく、その製品が本当に優れているのかどうかという、少なくとも本質的な議論で測られるべきです

⇒cool!!

 

○P444

貴船:患者のためといいつつ、私が優先してきたのは、いつのまにか自分のことばかりだったな。だけどな、久坂君。医者は医者だ。患者と向きあい、患者と寄り添ってこそ医者だ。地位とか利益も関係なくなってみて思い出したよ。

⇒素直な反省である。太平洋戦争で、無謀なインパール作戦で多くの日本人に餓死させ、戦後一時反省の弁を述べたものの、最終的には正しい作戦だったと強弁した牟田口廉也とは対照的だ。

 

○P445

人の命を救う医療機器を作りたい-。それが、久坂が日本クラインという会社に就職した理由だったはずだ。だが、営業ノルマや収益目標に追い立てられうち、いつしか自分が抱いていたはずの高邁な理想は脇に追いやられ、ひたすら収益と効率を追求するばかりの日々を過ごしてきた。

⇒まさに、アメリカ型の新自由主義の犠牲者である。

 

○解説(村上貴史)残念ながら、医療の分野においても先に述べたように、「悪人」がいるように、ものづくりの分野においても、矜恃を持たない人間がいる。一級建築士によるマンション耐震偽装は矜恃に欠けた個人が生じさせた問題だが、かつてリコール隠しが問題となった自動車メーカーによる燃費試験データ不正(2016年発覚)、大手鉄鋼メーカーの強度などの検査データ改ざん(2017年発覚)、複数の自動車メーカーの無資格検査(2017年発覚)など、会社組織としての不正が問題になったことは、本書読書の方々の記憶にも新しいだろう。本書はそうした問題にも言及しているが、本書の発表は、2015年である。そう、それらが発覚する前なのだ。経済を、経営を、そしてものづくりを知る池井戸潤だからこそ、この「現実」を先んじて見抜くことができたのだろう。

⇒とってつけた感も否定はできないが、現実である。中公新書の「企業不祥事はなぜ起きるのか(2017)」がとりまとめているのだが。

 小学館文庫

 

下町ロケット ガウディ計画

 著/池井戸 潤

定価本体720円+税

発売日 2018/7/6

判型/頁 文庫判/472頁

ISBN 9784094065367www.shogakukan.co.jp

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